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エンマ様はぶっ飛ばす  作者: 麦パン
輪廻の世界

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第四十二話 先代閻魔の思惑②

エンマ視点です。

 ――閻魔殺陣神楽。

戦闘に特化した演劇や演舞の立ち回りである『殺陣』に、あの時みた美しい『神楽』の舞を合わせた技だ。


 攻撃を躱し、往なす。防御ではなく、カウンター狙いの必殺の一撃を狙う。

蝶のように舞い、蜂のように刺す。ボクシングの考えを流用した技でもある。


 「一撃必殺――」


 舞い踊り、回避行動を遠心力に変え、無駄なく踏み込む。

腕を振り、足を踏み込み、体中の力をただ右拳に乗せて放つ。

それは先代の一瞬の隙を捉えた渾身の一打となる!


 「――閻魔王殺拳(えんまおうさつけん)ッ!」

 「がぁっ!?」


 ドゴンッ! と破壊音が炸裂する。

それは先代の腹部に拳の形をした大質量の鎚が神速で打ち込まれた結果によるもの。

先代は身体をくの字に曲げながらぶっ飛び、コロシアムの壁にぶち当たった。

土煙が舞い、その姿は見えないが手応えはあった。

これまでの敗北より大きな手応えが。


 「殺れたはずだが……」


 だが、殺しきれたかまではわからない。

近づかなければならない。

慎重に、慎重に。


 「げほっ! ゲホッ!」

 「!?」


 土煙が晴れるとそこには瓦礫を体中に生やした先代の姿があった。

腹には黒い穴が空いており、その上半月部分からはカーテンのように血が滴り落ちていた。

内臓もほとんど吹き飛んでないだろう。

だが、それでも先代は立ち上がろうとしていた。

そして、それでも酒をやめようともしなかった。


 「ぐび、ぐび……」

 「ここまでいくともはや妖怪の域だよな……」


 しぶとさと酒に対する周年に関心していると、 先代がどこからか出した瓢箪を呷る。

すると、食道を経由した酒が腹に空いた穴からこぼれだす。

だが、それでも先代は瓢箪を傾け続け、その最後の一滴まで飲み干す。


 「ぷはぁ~!」


 口を拭い、酒に酔っているのか、死に体でなのかはわからないが千鳥足で俺の方に歩み寄ってくる。

据わった瞳で、ゆっくり、ゆっくりと。

その姿は亡者のようにみすぼらしくも、誇らしく見えた。


 「先代……」

 「エンマぁ、お前さん、手加減、しやがったなぁ?」


 そう小さくしゃがれた声で言われ、思わず声が詰まる。

答えを聞かせてもらうために手加減したかと言えばした。

だが、それでも上半身を塵にして吹っ飛ばすぐらいの威力は合ったはずなんだが……。

そんな俺の気も知らずに先代は、


 「まず、謝らなくちゃのぉ」


 そういい、穴に穴を開けながら頭を下げた。

いまだ、出血は止まらず血は滴り落ちている。


 『なんで謝るのか』なんて考えるのは子供の考えることだ。

俺も子供でじゃあない。

気づかないふりも大概にして、大人の思惑に踊らされても良かったが、それもこの状況じゃ駄目なようだった。


 「すまな――」

 「だぁーっ! 水くせぇ!」

 「――んぁ?」

 「そういうのは無しにしようぜって言ってんだ、先代」


 ぽかんと口を開けて呆ける先代。

――腹にどでかい穴が空いても、俺や周りの燐音とかに対して謝ろうとしてんだろう。

それがどんなことか詳細まではわからないが、俺はそういう面倒なのは嫌いだ。すっきり後腐れなく終わらせたい。

だからこそ、死者の魂をぶん殴って三途の川を超えさせてたんだから。


 「……俺は全部は知らねぇ。だけど、この死闘で拳でぶつかりあってわかったんだ。先代が何か企んでいるってことがよ。だから、挑発にも乗ったんだ」

 「カ、カカッ……! なら、朱夏を殺したっていう嘘も見抜かれてたわけだ」

 「あ、あ、当たり前だろ? 俺はエンマ。閻魔大王、あんたの一番弟子さ!」

 「調子が良いのぉ」


 心底嬉しそうに笑う先代。

――だが、朱夏を殺したっていう嘘は見きれてなかったのでこれは心の奥底にしまっておくことにする。まじか。じゃあ、まだ生きてるってことか。勢いに任せて思わず本気で殴っちゃった。俺の方こそ謝らなくちゃいけないやつだ。


 「ゲボッ!」

 「先代!」


 そんな事を考えてる間に辺りに血の塊を吐き出し、うずくまる先代。

俺は急いで駆け寄ったが右手を僅かに挙げ、止められた。


 「なぁに、神は死なねぇ。これも何年かすれば治る――と言いてぇとこだがこの傷は治らねぇな……」

 「いや、普通に殺す技を放ったからな」

 「カカッ! 神を本当に殺せるまで力をつけおったか! これもあのクソ神の思惑なのが遺憾じゃがのぉ」


 そう眼を細め、遠くを見る先代は歳相応の爺に見えた。

致命傷の負傷も合わせ、老い先短いとそう感じさせる姿であった。

それと同時に俺は治す方法と謝罪の機会を窺っていた。


 「さて、どこから話したもんかのぉ。要点をまとめると長くなるから、答えだけ言ってしまおうかのぉ、エンマ」

「……聞かせてくれ先代。あんたが自分を殺させてまで叶えたかったこと。その真意を」


 考えを切り替え、答えを待つ。

数秒、数分間が空き、空気を目一杯吸い込んでは身体の穴から漏れ出す先代はそれでも口を動かし、声を紡ぐ。


「――エンマと立花。その別世界線の存在である燐音と朱夏も合わせてじゃ。合わせてすべて蘇らせる。そうさのぉ、転生させると言えばわかるか? それがわしの最終目的じゃ」

「なっ! 転生!? 俺を、俺達を現世に生まれ直させるってかぁ!?」


 そうとんでもない爆弾発言を残したのだった。

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