表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンマ様はぶっ飛ばす  作者: 麦パン
閻魔の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/50

第二十一話 先代閻魔様はぶっ飛ばす (後編)

手で庇を作り、三途の川の上空を見張る。


「カカッ! いい表情をしてぶっ飛んで行ったわ!」


 快活に笑うと、その腰をドカッと地面に下ろし、私の方向に向き直り、問いかける。


 「さて、嬢ちゃんいや、朱華よ。おじいちゃんと話をしようか。なんて、カッカッカッ!」


 呆然と見ることしか出来無かった私の首は自然と縦に振れていた。

情報を、この先代がどういう事を思って行動しているのかを知るために。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 「え? じゃあ、何? エンマは空を飛ぶだけで三途の川を渡れるってこと?」


 「まぁ、そういうことじゃな! 正確には条件を満たさないといけないんじゃがまぁ、それはなんとなくわかるじゃろ」


 「わからんない」


 「ありゃ、わかんないか! カカッ!」


 ――なんというか。凄い落胆と言うか拍子抜けというか、先程までとは明らかに違う温度差があった。やはり、あれはすべて演技だったのだろう。真に迫っては居たが。


 それは、エンマがぶっ飛ばされて三途の川の上空に旅立った後、私は先代か神かわからない存在と話をした。


 他愛も無い話から重大な話まで。様々だが、重要なのは数点のみ。


 「えぇっと、おじいちゃん――先代? は享受の神の弟? そういう事?」


 「カカッ! 疑問だらけ! まぁ、近いのう。同一人物というのもちと違うか。ん~む。説明がし辛いのぉ。お、アレなら分かりやすいか」


 「あれって?」


 「表遊戯と裏遊戯。千年パズル。二重の異なる人格。どうじゃ? なんとなくわかりやせんか?」


 「んー。つまり、性格や行動は違うけど、同じ存在ではあるってこと?」


 「そう! いやー、エンマの読んでおった少年誌がここに役に立つとは」


 二重の異なる人格。どちらが、表とか裏とかはわからないが享受の神の別側面の存在。それが先代ということらしい。でも、なんで閻魔なんてやっていたのか。それは、


 「あいつがやりたくないって言ったから。これが答えじゃな。まぁそのお陰で死んじまったんじゃがな! 身体の魂が! カカッ!」


 先代は神であるため、本来は魂を持たず、意識の生命体として生きているそうだ。

そこで、無理やり閻魔になるために、魂を粘土のようにこねて作成し、人間のように動けるように調整をした。


 試行錯誤した結果身体だけ時間が進み、歳を取って高齢の爺さんの身体になったらしい。


 まるで、神話の話のようにまるで頭に入ってこない。が、とりあえずわかっているように振る舞う。うんうんと頷くことがよく聞いていると思われるコツ。

 

 そして、もう一つ。


 「三途の川を渡ろうとするとエンマが元いた位置に戻ってくるという謎の現象、あれは閻魔という役職が通ろうとすると起きる現象でのぉ。わしも戻された。じゃが、ここには抜け穴がある。これを使えば最初に行ったみたいに条件付きで向こう岸まで行けるんじゃよ」


 「ほうほう。なるほど。ではもったいぶらんと教えてください」


 「そうさのぉ。じゃが、まず」


 「まず?」


 「この状況をなんとかせんとのぉ」


  話している最中もずっと、先代の腕にはケルちゃんが噛みついていたのだった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 「閻魔が触れたものは例外? ズズズ……ぷはぁ」


 「そうじゃ、触れればそれは輪廻転生装置に向かうためのタグが貼り付けられる。付けられたものは通れて、付けれてないものは三途の川を渡れず戻ってくる選別装置みたいのがあるんじゃ。ワシがエンマを殴った時例外的な閻魔の権限を行使してエンマに貼り付けた。じゃから渡れるようになったんじゃ。ズズズ……おぉ、これは中々美味いのぉ」


 唸り、吠えるケルちゃんをなんとかなだめて、現在エンマの家で緑茶を啜っている。話し合いは外でやるより、中のほうが話しやすいからだ。

因みに台所の戸棚の奥で大事に保管されていたので恐らく高級品。味がいいのか勝手に飲んでる背徳感からくるものなのか。


 とりあえず美味しい。


 「で、朱華よ。随分落ち着いとるがエンマのことが心配じゃないのか?」


 「それ殴り飛ばした本人が言うの?」


 「それもそうか、カッカッカッカ!」


 「まぁ、心配だけど先代がトチ狂って殴ったわけじゃないってわかったから」


 「確かに、傍から見れば狂った爺だのぉ!」


 そう、最初は違和感だけだった。いつも笑っていた先代。それが急に自分は神だなんて叫んで本気でエンマを殴る。それには理由があるはずだ。そう思って私は傍観に徹した。

 そこで、気づいた事があった。

 先代は本気で殴っていたがその顔が本意でないというか迷いがあったのだ。


 そこで、私は何かわけがあると思い、表面上はエンマを心配した声を出して探っていた。


 「実際、神って言うより詳しい正体を明かしてから殴り飛ばしても良かったんじゃないの?」


 「まぁ、それでもいいんじゃけどあいつ享受の神嫌いじゃん?」


 「え? 私も嫌い」


 「わぁー、おじいちゃんショック~! じゃなくて、――ワシから、親離れしてほしかったというのが本意かのぉ」


 「おじいちゃんっ子ってこと?」


 「そうそう! 可愛げのない小僧じゃったがのう! カカッ!」


 そう話す先代の顔はとてもうれしそうだった。そこからの話はエンマが車を熱く語るように長かった。


 「ワシが死んだ時、物凄い泣いておってのぉ。それを見てたら死んでも死にきれんとおもってのぉ。そこから、ワシは閻魔の記憶を辿って、浄化の泉で現れた記憶に縋り付いて、記憶のガラス玉に己の存在を投影してなんとかこの死後の世界に舞い戻ったんじゃ」


 詰まる所先代はエンマを気にしていた。だから、なんとかしてこの世界に戻ってきたということだろう。私は話半分に聞いていた。悪い癖だ。


 「んで、先代は私に話しておかないことあったんじゃないの」


 「あぁ。そうだ。そうだった。すまん。思い出話が過ぎたのぉ。頼みがあるんじゃ」


 「頼み?」


 「そう。頼みじゃ。――エンマを助けてやってはくれんか?」


 深く、頭を下げる先代。そこには真剣にエンマを思った思いが詰まってる。

真剣に思うなら騙すことなんてしなければいいのだがそこが二人の距離感というものなのだろう。



 「私、そんな力ないよ」


 お願いされてもだ。私にはエンマみたいに膂力はないし、米袋だって持てない非力な乙女だ。力になれることなんて無さそうだ。


 「カッカッカッ! 目に見えるものが力の全てではわい。わしが言ってるのは心の支えになってほしいということじゃ」


 心の支え。精神的な負担を軽減や、弱った時に助けてあげることを言ってるんだと思う。でも、疑問がある。その精神的負担が今、エンマは凄いかかっていると思う。だけど、


 「その心をへし折りかけていたのは?」

 

「……ふむ、ワシじゃな」


 そう、この先代である。自分が神と言い放ち、。エンマを騙し、心を揺り動かしてめちゃめちゃにした張本人がそういう事を頼むか? と思ってしまう。だけど、


 「うん。できるだけ助けて支えになって差し上げるよ」


 「おう、すまんなありがとう。感謝する」


 「でも、もしかして私、エンマの心っていう負債押し付けられてない? 気のせい?」


 「気のせいじゃろう」


 最後の会話でなんとも釈然としない気持ちだけが私の中に残った。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 「――ねぇ? やっぱ止めない? ほら、着地とか色々問題あるじゃん?」


 そう、今からでも遅くない。止めよう。そう進言してるのにあの爺さんは相変わらず元気な笑顔でこちらに声をかける。


 「カッカッカッ! 問題ないぞ! あそこはこことは違ってちゃんと死なないようになってるからのぉ!」


 「痛みは? 落下した時の痛みはどうなの!?」


 「――。まぁ、それはそれとして」


 「ぎゃー! やっぱ、私は船で行く! 助けてエンマ様!」


 沈黙が怖い。どうなるかわからない世界に殴って飛ばされるという経験は他の人はあるのだろうか。無いだろう。因みに私は今から殴り飛ばされる直前の可哀想な乙女である。


「カッカッカッ! エンマならすぐに会えるぞ? 文字通りの向こうのあの世でなぁ!」


「すっごい悪い顔してる!」


「さぁ、――ぶっ飛べ!!」


「ぎゃーー!」


 案外、優しく殴られた私は空を飛ぶ。まるで、人間ロケットのように山なりに。これは怖いもう二度としたくないと切に願った。



 ――木霊する声は三途の川の上空で響き渡る。その日、異なる時間に二つの影が宙を舞う。その姿は鼻を垂らしながら飛んでいた滑稽な姿であったと記しておこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ