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楽しい部屋  作者: 竜胆
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部屋移動

文は隔離室に居座ります。

隔離室の三部屋は廊下を挟んで看護師詰め所の横にあった。 隔離室を監視するモニターが設置されていた。私の部屋も映っていた。


隣の部屋に、はすっぱな印象の中年の女性が入られた。挨拶をしても無視をされた。その患者さんは常に不機嫌だった。しばらくしたら、部屋を出て行かれた。


病院のお母さんとして私が慕っている両親と同じ年の患者さんが、その後に隣の部屋に来られた。足を痛めておられて、ステッキをついて歩いておられて驚いた。手術して間もないまま、この病院に入院したみたいで発熱なされた。私は看護師さんはあまり様子を見に来ないから、病院のお母さんの世話をしていた。お母さんもしばらくしたら隔離室を出て行かれた。


病棟長が変わっていた。中年の女性だった。寂しく感じた。副長さんは変わっておられず、にこやかな笑顔の男性だった。


私はペースト食を絵に描いて、味からそれが何の料理か当てるのが楽しかった。お腹が空くようになったから、強面の看護師さんに「刻み食に変えて欲しいです」と言ったところ、彼は「かなりお腹が膨れるようになりますよ。大丈夫ですか」と心配をしてくれた。「お腹が空きます」と私が言うと、刻み食の写真を持って来てくれて見せてくれた。「ご飯食べられそうですか?お粥にも出来ますよ」と言われ、お粥は嫌いだったが仕方がないと思って、彼の言う通りにした。お粥は塩で味がついていて参ってしまったが、私は頑張って食べていた。


『隔離 3 』から約一週間後にクールな精神保健福祉士(ワーカー)さんが〝任意入院に際してのお知らせ[解放病棟入院]″という書類を持って来られて、「病室に移動して下さい」と言われたが、私は拒否した。隔離室での生活に私は安らぎを感じていた。静かだし、誰にも干渉されないし、気楽で心地が良かったのだ。楽しかった。出たくなかった。


看護師さん達の態度も変わって、冗談を言い合ったりしていた。


担当の看護師さんに、「私の状態はどう思われますか」と尋ねたら、「軽躁です」と冷静に言われた。

彼が準夜の勤務の時にはお茶をご馳走になっていた。変わらぬ美味しさだった。彼はまだ結婚していなかったから、「彼女さんが待ちくたびれていますよ」と私が彼に言うと真面目な顔で「まだ独身を楽しみたいです」と言っていた。


私のモニター画面には紙が貼られて、部屋の中が見られないようになされた。

お風呂の時間も朝十時から入られるようになった。


主治医の院長先生は私のワガママを許して下さっていたが、副院長先生が「隔離室は本来緊急を要する患者さんの部屋です」と仰られて、私は一ヶ月以上居座っていた隔離室を出た。


朝ごはんを食べて部屋移動をした。食事は刻み食から、特食になっていた。ご年輩の方向けのあっさりとした食事だった。


個室が一部屋空いていた。私が最初に入院した部屋だった。私は迷った。個室に入るか、大部屋に入るかを。少し迷った末に、私は同じ年で親しい女性の看護師さんに「大部屋にします」と言った。「大丈夫?いいの?個室がいいんじゃないの?」と心配そうに言われたが、私は大部屋にチャレンジしてみたくなっていた。


部屋は四人部屋で、入って右側のベッドと机とクローゼットが私用の物だった。半透明の仕切りがあり、そこ奥にベッドに横になっている姿が見えた。

左手前には若い色白の女性がいて、ベッドに横になってスマホでゲームをしていた。その奥に病院のお母さんがおられて、私は嬉しくなった。横になっておられた。


私はカートで運んで来た荷物をクローゼットや、机の引き出しにしまった。部屋に流れる環境音楽を消した。


病棟のお母さんが起きられて、「文ちゃん!」と声を掛けて下さった。「よろしくお願いします」と私は言って、お母さんに足の調子を聞いたりしていた。病院のお母さんが、「この子はね、作業所仲間なの。とてもしっかりしているのよ。三人とも主治医の先生が同じだわ」と、若い彼女を私に紹介してくれた。目が大きいなぁと思った。彼女から、はすっぱな女性が私の事を患者さん達に悪く言って回っていたから、どんな人が来るのか不安だったんですよ、と言われて驚いてしまった。何がしたいのか分からなかった。その女性と同じ部屋で無くて良かったと思った。


食堂でお昼ごはんを食べる事にした。薔薇園が見下ろせる窓に面した席が空いていたから、テーブルにつかれていた、男性二人に「座ってもよろしいですか」と声を掛けて、頷かれたから席に座り、昼ごはんをゆっくりと食べ始めた。お二人と会話はしなかった。時折薔薇園を見て食べていた。病院のお母さんは足が悪いからと言って、食堂の入り口のテーブルだった。昼薬を看護師さんから貰って飲んだ。


洗面所で歯を磨き、煙草を吸いに外に出た。

主治医の院長先生から、行動範囲は病院内と喫煙所のみ、と制限されていた。私が先生の前で「体重が二キロ戻りました」と言って、くるりと回って見せたら、先生は苦笑されて「外を歩いて倒れたらどうするのですか」と仰ったので、先生の言われる通りにする事にした。


薔薇が小さいものから中輪、大輪の物、蔓薔薇と色んな種類が植えてあり、薔薇の名前の札が付けられていて、薔薇園を見て回るのが楽しかった。中央に噴水もあった。


噴水はもう一箇所、病院の建物の隠れた場所にもあり、椅子が五脚置かれていて、私のお気に入りの場所だった。秘密の場所だった。


子ども外来に行き、カウンセリングの先生にまた週に一回カウンセリングをして下さい、と頼みに行った。先生はニコニコ笑顔で了承して下さった。


秘密の場所で母に電話を掛けた。「今日、部屋を移動したよ。四人部屋なの」と私が言うと母から「大丈夫なの?」と聞かれて「個室空いてたけど、断ったの。お父さんにも伝えてね」と言って電話を切った。


四人部屋でもちゃんと眠れた。三人の気配は気にならなかった。

朝起きて顔を洗い歯を磨いて、パジャマからカットソーとスリムパンツに着替えて、靴下を履き、顔に日焼け止めを塗りお粉をはたいてリップクリームを塗った。帽子を被って、エレベーターで一階に降りて喫煙所まで歩いて行った。朝の空気が気持ちが良かった。もう五月になろうとしていた。


隔離室に一ヶ月以上いました。楽しかったです。

個室にするか、四人部屋にするかは迷いましたが、チャレンジしたい気持ちが出て四人部屋を選びました。

四人部屋の話をこれから書いて行きます。

読んでくださり、ありがとうございます!

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