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魔女たちの宴 ヴァルプルギスの夜  作者: mask
墓守の魔女
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裁かれし不死

「アル、ベルベット。あなたたちは墓守の魔女を見ていて。それと墓守の魔女が倒れたことでゾンビたちが家に入れるようになったから気を付けなさい」

 復讐の魔女は厳しい顔で二人に言った。

「俺とソラも行くぞ、復讐の魔女」

「アンタたちに何が出来るのよ。足手まといは引っ込んでなさい」

 復讐の魔女がリクを睨み付ける。だがリクは顔を逸らさない。

「救済の魔女と剣姫の魔女に魔法を教えてもらった。今なら俺も戦える」

 二人は互いの瞳の奥を見て、

「……勝手にしなさい」

 復讐の魔女が折れた。

「バロン、鉄鎖の魔女のところまで案内しなさい」



 雲のせいで薄暗い無数の十字架が林立する場所に鋼鉄製の処刑具--アイアンメイデンが場違いな存在を放って立っていった。

 頭の部分に少女の顔が象られたそれの中からは、ブチンと引き裂かれるような音と、バリ、ボリと何かが砕かれる音が響く。

「生きている方が美味しいね。死体は臭いし、肉が固い」

 少女の声がアイアンメイデンから聞こえる。

「この男の肉はまだ新鮮だけど味は良くないな。血がドロドロだし。やっぱり一番は若い女子供か」

 食事の感想を独り言のように呟くアイアンメイデン。

「さっきの小さい魔女。彼女は美味しそうだったな」

 三人居た男のうちの一人を助けて逃げていった少女。彼女が魔女であることをアイアンメイデン--鉄鎖の魔女は分かっている。

「それで君は誰なの?」

 鉄鎖の魔女の前に立ったのは旅装姿の魔女。

「初めまして吸血鬼。いえ、『罪人』鉄鎖の魔女」

 旅装姿の魔女は鉄鎖の魔女に拳銃を向ける。

「私は復讐の魔女。あなたたち邪魔な魔女を殺す才能溢れる魔女よ」

 復讐の魔女はクスリと笑う。

「そうか、君が傀儡の魔女を。それほど強そうには見えないけど」

「確かにあなたには勝てないわ。だって引きこもりの弱虫には私の魔法が届かないもの」

「挑発のつもり?」

 今度は鉄鎖の魔女が笑った。

「私は強者だが弱点が多い。だからこの身体は便利だよ。余程のことがない限り出たくはないね」

「それもそうね。こんなに十字架に囲まれてるんですもの。吸血鬼は死ぬわよ」

「だから出ずに食べてあげるよ、復讐の魔女」

 ギィーっとアイアンメイデンが開く。

 そこにあるのは深淵だった。

 手を伸ばせば腕ごと喰われ、覗き込んでしまったら心を狂わされる深い闇が現れた。

「!?」

 音速に近い速さでアイアンメイデンから杭の付いた鎖が飛び出す。

「チッ!?」

 復讐の魔女は身を捩りギリギリでかわす。

「少し身体に魔法を使うか」

 復讐の魔女の瞳が一度だけ光る。

 鎖が数を増し、ジャラリと音を発てて復讐の魔女に襲い掛かる。

 その全てが音速に匹敵する。

 だが、復讐の魔女にはそれが見えている。

「よっと」

 復讐の魔女は難なくかわす。

「ちょこまかとしないでくれるかな」

「魔法でもない、こんな単純な攻撃で私が殺せるわけないでしょ」

「そうか、加減しすぎたね。あまり肉を壊すと味が落ちるから」

 鎖が倍に増えた。数は三十以上ある。

 その一本が復讐の魔女の左腕を貫いた。

「いくら目が良くても身体が追いつかないだろ」

 左腕を貫いた鎖はそのまま彼女の左腕を縛り自由を奪う。

「さて、君はどんな味かな?」

 左腕が鎖によって深淵に引っ張られる。

「喰われて堪るもんですか!?」

 復讐の魔女は生きている神経で左腕を動かす。大地を踏みしめる。

「走りなさい、リク!」

 墓場の陰に隠れていたリクが駆け出す。

 その手には一振りの剣。

「只人か。今は邪魔だ」

 鎖の一本がリクを狙う。

「復讐の魔女!」

「分かってるわよ!」

 復讐の魔女の言葉でリクの瞳が光る。

 リクは剣を振って鎖を弾く。

 だが、彼も目が良くなっただけ。肉体は追い付けず、剣を持つ腕が絡め取られる。

「順番待ちだ。君は魔女を食べた後にいただくよ」

「そうか」

 リクは笑う。

「なら先にこれを食べてろ!」

 リクが剣の切っ先を深淵に向ける。

「ソラ!」

 リクの言葉に剣が光り、リボルバー拳銃に変わる。

 そして弾丸が放たれた。

 銀の銃弾が、深淵に呑み込まれた。

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