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魔女たちの宴 ヴァルプルギスの夜  作者: mask
剣姫の魔女
31/83

彼の魔法

「救済の魔女、俺に魔法を教えてくれないか?」

 未だに剣姫の魔女との戦闘の傷跡が残る中庭で唐突にリクが言った。

「どうしてですか?」

「戦うためだ。俺には何の力もなくて魔女たちやベルベット、そしてベルベットを修理できるアルに助けられてばかり。俺だって戦える力が欲しいんだ」

「リクくん、別に力がなくても誰もリクくんに失望しませんよ?」

「そうじゃない。俺はただ、守られるだけじゃ嫌なんだ!」

「だが、君からは微かな魔力しか感じられない」

 リクに言ったのは城の主である剣姫の魔女だった。

「剣姫の魔女。お身体は大丈夫なんですか?」

「ああ、おかげさまでな」

 救済の魔女に微笑んだ剣姫の魔女はリクに険しい表情を見せる。

「その程度の魔力量ではすぐに枯渇して場合によっては死ぬぞ?」

「それなら、少しの魔力で戦える魔法はないのか?」

「戦闘用の魔法はそれなりの魔力が必要だ。君だけでは無理がある」

「"俺だけ"では?」

 リクは剣姫の魔女の言葉を逃さなかった。

「君、使い魔が居るだろう?」

「ああ。ソラ、出ておいで」

「はい」

 リクの服から顔を出したネズミ姿のソラ。飛び出すと少女の姿になる。

「ふむ、良い使い魔だ。姿を変えられる魔法か。どこで覚えた?」

「ある魔女にかけてもらった魔法です。ネズミの私でも生きていけるように」

 ソラが言っているのは黒猫の魔女のことだろう

「それなら話は早い。君に一つだけ教えられる魔法がある」

「本当か!?」

「だが、先に訊きたいことがある」

 剣姫の魔女は魔法で顕現させた剣の切っ先をリクに向けた。

「君は私のようにならないと誓えるか?」

 剣姫の魔女の真剣で、どこか悲しげな問いかけ。

 リクには剣姫の魔女の質問の真意が分からなかった。

 だが、分からなくても良かった。

「俺は、俺だ。いつだって誰かを守りたいと思って戦ってきた。魔法が使えるようになったからといってそれは変わらない!」

「それが身を滅ぼすとしてもか?」

「そんな格好良い死に方は出来ない。守り続けるには惨めで憐れと嗤われても諦めずに生きなくちゃならないからだ」

「……そうか」

 剣姫の魔女は一度目を伏せて、微笑んだ。

「良いだろう。君には魔法を教える価値がある」

「リクくん、本当に良いんですね?」

 救済の魔女が心配そうに問いかける。

「お願いします」

 リクが頭を下げる。

 救済の魔女と剣姫の魔女は正反対の表情をした。

 救済の魔女は悲しげに、剣姫の魔女は満足げに。

「救済の魔女。彼も男だ。君が大事に守っていても君の手から抜け出すだろう」

「……分かりました。リクくん、頑張ってください」

 こうしてリクはリクだけの魔法を覚えた。

剣姫の魔女編 終

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