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魔女たちの宴 ヴァルプルギスの夜  作者: mask
剣姫の魔女
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騎士の街

「見えてきましたよ!」

 手綱を引いていた救済の魔女が指差す。

「あれが次の街、私たちの王国魔導師団と協力関係にある東部騎士連合の本拠地です」

「大きいな」

 リクは思わず呆ける。

 復讐の魔女たちが幌馬車で一日かけて辿り着いたのは街と言うよりも堅牢な要塞だった。

「街から誰か来ました」

 目の良いベルベットが街から馬で駆けてくる一騎を見つける。

「あれは街の兵士ですね。私たちを探りに来たのでしょう」

 幌馬車は道中で停車する。

「この先は許可された者以外入れない。許可書はあるか?」

 馬から降りずに問いただしてきたのは黒い綿の軍服の上に胸甲と顔出し兜を被った兵士。

「王国魔導師団名誉団長の救済の魔女と愉快な仲間たちです」

「これは失礼しました! ようこそお出でくださりました、救済の魔女様」

 救済の魔女が名乗ると相手は馬から降りて敬礼する。

「東部騎士連合長からお話は聴いています。さっそく剣姫の魔女のところまでお願いできますか?」

「はっ! 馬車のままで構いません。どうぞこちらへ」

 兵士の先導に続き、幌馬車は進む。

 化物市壁に唯一開いた大きな口の中を顔パスで通ると、石造りの街並みに出会う。

 街の住人や行商人などが伺えるが、圧倒的に多いのは武装した兵士たち。皆が何事かと幌馬車を不安げに見つめる。

「この大通りの先にある城の中庭で剣姫の魔女様を"繋ぎ留めています"」

 道案内の兵士が幌馬車に轡を並べて妙なことを言った。

「剣姫の魔女を抑えるのに余力はあるのですか?」

 訳を知っている救済の魔女は会話を続ける。

「いえ、ご協力いただいている魔導師の方たちが昼夜問わず魔法で縛っているものの限界が近いとのこと。魔力枯渇で何十人もの魔導師が医者に運ばれています」

「やはり『大英雄』の名は伊達ではないですか」

「ちょっと、どういうことよ?」

 不穏なものを感じた復讐の魔女が目を覚ます。

「剣姫の魔女は現在、私たち王国魔導師団の力で行動を封じています」

「どうして?」

 救済の魔女は一度言葉を詰まらせ、苦し気に吐いた。

「剣姫の魔女は『狂気化』しました。このままだと最悪の悪魔が誕生してしまいます」

「あなた、それを知っていたくせに私を連れてきたの?」

「はい」

 復讐の魔女と救済の魔女との間に険悪な空気が流れる。

「ふーちゃんなら、きっと。そう思っただけです」

「ふざけるんじゃないわよ。剣姫の魔女に会ったことはないけど、『大英雄』で『狂気化』してんでしょ? 私に死ねって言うのかしら?」

 復讐の魔女から冷たい怒りが流れ出す。周りに居るリクたちを恐れさせるほどに。

「到着しました。馬車は私たちが繋いでおくので皆様は中庭へ」

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