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5 天敵と好敵手

 #弊社__ウチ__#としては渾身の見積もりだったが、クライン氏の表情は変わらなかった。

 その意味を察したリアが焦って、


「ええと──これはあくまで叩き台でして、ご予算に合わせたプランをたくさんご用意しておりまして、その──」


 と、汗をかき始めた。余談だが彼女は汗っかきなのをひどく気にしている。


「ふむ。最初からベストプライスを提示してもらいたいものですな」

「ベ、ベストです! だって今度の支払いまでにどうしても必要な──」

「そこはですね!」


 俺は声量をあげてリアの失言に被せた。まったく何を言いだすんだ。


「先ほど弊社の代表が申し上げましたように、プランはたいへん柔軟かつ多岐にわたりまして、例えばシンプルプランであれば価格もぐっとスリムに抑えることが可能となります」

「ほう。シンプルプラン」

「ええ。例えばこの遠征費ですが、ご覧いただいてる通り一日あたりに換算しますとニニ五〇〇デルとなっております。これは三日を全行程とした場合の#価格__プライス__#設定でございまして、資料の見やすさを考慮して一日単位としておりますところを、半日単位の従量制にいたしますと仮に駆除がニ日半で完了すれば、さらに一一ニ五〇デルのプライスダウンに──」

「それがシンプルプラン?」

「はい」

「シンプル?」

「は、いえ、それは──その、実作業とリンクした設定が、ある意味でシンプルという──」

「プレゼンはわかりやすくあって欲しいものですな。我々はともに多忙なのですから」


 いかん。いちいち言葉尻をとらえて、細かいツッコミを入れてくる。さすがは業界最大手。夥しい冒険者を葬ってきた大迷宮商会だけはある。

 俺は必死に思考をめぐらせて状況を打開する道を探した。それがまとまらないうちに、


 バーン! ホーッホッホッホ!


 勢いよく開けはなたれる木製の扉と、響きわたる笑い声。

 #古典的__クラシック__#かつ#典型的__テンプレ__#なお嬢様キャラの登場だった。


「どうやら苦戦中のようね? ノーザン・クエストの皆さん」


 シンシア・カークコールディ──ウェーブのかかったロングヘアーに整えた細い眉、カールした睫毛、ピンクのリップ、派手なネイル、フリル満載のドレスに日傘。

 そんな身なりからは想像もつかないが、彼女はクエスト業界最大手・㈱オールダム通商のカスバ支店長であった。

 かつ、おそれおおくも現職カスバ市長殿のご長女でもあらせられる。

 もちろん今日も、公的には部下、私的には従僕のニールとエバンスをつき従えていた。


 っていうか、他社が商談やってるブースに入ってくんな。

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