表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/50

12、一瞬だけの邂逅

待ち合わせ場所になっている食堂は混み合う時間では無かった筈だが、何故か適度に人で溢れていた。

というより、一部に奇妙な人だかりが出来ている。


そして、ハルナの目的とする人物は、その人だかりの真ん中辺りに座っていた。


その人物。ケイトに、ここですと呼ばれそちらへ向かうと、何故かテーブルの下に避難訓練よろしく隠れているアルの姿があった。


奇妙な人だかりはそのせいだった様だ。


「なにしてるの……?」


ハルナが問えば、机の下のアルは、声を発せず唇の型だけ「黙ってろ」と動かした。


「どういう事?」


取り敢えずはアルを気にしない事にして、ハルナはケイトに訊ねる。


「あれです」


「あれ?」


ケイトが『あれ』と示す方へ目を向ければ、そこにもう一つの人だかりが出来ていた。

そして、その中心には……。


「ユキ……!」


こちらの世界に来た始めの日に別れて以降、近況知れずだった、この世界に正当に招かれた聖女。ユキの姿があった。


しかし、ユキは一人ではなかった。


ユキは金髪の背が高い男性と一緒におり、何かを言い争っている風に見える。

そして、その男性は髪の色こそ違えど、顔立ちがある人物にそっくりだった。


ハルナは先ほど放置を決めていた机の下に潜む彼の人を見る。


「ケイト……あそこに見える男の人ってもしかして今ここに居る人と関係あったりするかしら?」


そう言って机の下を示せば、ケイトはその通りですと頷く。


「お察しの通りです、ハルナさん。あのかたは、この国の第一王子、カイン・ハインツベルク様で、本来ならばアルさんのお兄様にあたるかたです」


「やっぱり……」


兄弟して派手だなぁ……と、ハルナは口に出さず思った。



「でもなんだってその王子様が魔法省の食堂に?王子様と食堂ってなんか結びつかないんだけれど……それもユ……聖女様と一緒に」


ハルナが疑問を口にする。

すると、物凄い勢いでアルの手が伸びて来て、机の下に引き込まれた。


「何す……」


「お前聖女と知り合いなのか!?」


何すんのよ!……と、言い切る前に口を塞がれ、恐ろしい形相で凄まれる。


「知り合いかと言われれば……まあ……顔見知り程度だけど……」


同じ世界から飛ばされて来たので、同郷と言えば同郷になるのだろうが。

こちらの世界に来、自己紹介をして直ぐに分かれたに等しいので知り合いと言えるほど相手の事を知らない。


ハルナの言葉を聞いたアルはほっとした様に息を吐いた。


「ならお前を見付けて聖女が駆け寄って来る……という心配は無いわけだな?」


「いや、それは分からないけど……さっきから一体なんなの?」


「ハルナさん、前にお話しした属性反発ですよ。アルさんは今、カイン様から隠れている最中なんです」


ケイトの言葉でハルナは漸く合点がいった。


アルは自分の反発対象である光の属性を持った兄と、そしてその上位である神気を持った聖女、ユキを避けるために隠れていた様だ。


そこでハルナの疑問は再び元に戻る。


「で、どうしてその王子様と聖女様が食堂に?」


「それは俺が知りたい……」


いつも腹立たしい程に自信満々のアルが打ちひしがれている。

属性反発というのは相当大変なものらしい。


それを見ながら、ケイトが「僕も経緯は分からないんですけどね…」と前置きしてからハルナに説明し出した。


「聖女様が浄化のための力の使い方を学ぶために、今、魔法省に通っていらっしゃってるんですよ。カイン様も時々それについていらっしゃるみたいで……その流れでどちらかが食堂に行こうと言い出したんではないですかね?」


ケイトの言葉に、アルは、「全く迷惑な話だ」と、更に沈んでいる。


その話しで、ハルナは、そう言えば以前ウィンの元に『聖女の指南役』の話が来ていたのを思い出した。

あれ以来ウィンからその話は聞かなかったし、ハルナが魔法省を歩いていてもユキと出くわす事が無かったので、どうなっているのかまでは知らなかった。


ウィンは断っていたし、押しつけられそうになっていたドラグナーも現在普通に職務を果たしている様に見えるが結局誰が指南役になったんだろうか……?


その問いにもケイトは「ああ、それはですね」と答えてくれた。


「魔法省にはウィンさんジークハルトさんの他にもう一人、実力者の魔法師の方がいらっしゃるんですよ。そのかたが中心になって力の使い方を指南しているみたいですね」


魔法師は本来教えるという事に向かないらしいので、時々ドラグナーが補佐に付く形にはなっているらしい。


「実力とあらゆる面から上層のかたたちは本当はウィンさんに教えて欲しかったらしいんですけどね。ウィンさんはやはりというかお断りになったみたいで」


その現場はハルナも見ていたから分かる。

その時ウィンはドラグナーにその役を押し付けようとしていた筈だ。


「ジークハルトさんもお断りになったみたいですね。……まあ、ジークハルトさんは文官も兼務していたりしますので仕方ないとは思いますけど」


「ドラグナーさん文官も兼務してたんだ……」


ハルナの脳裏に在りし日のやり取りと、ドラグナーの手伝いをする度目にする書類の山が思い浮かぶ。

そりゃ日々あれだけ深く眉間に皺も寄るというものだ。


(魔法関係は無理だけど、そっちだったら手伝えそうだからウィンが何と言っても、今度からもっと積極的に手伝おう)



「もう大丈夫ですよ」というケイトの合図で、アルと共に机の下から這い出しながら、ハルナは心に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ