熱い
掲載日:2016/09/28
10度を下回る寒空の下
「あいつらは俺を褒めちぎって混乱させて俺をおとしめようとしているに違いないんだ。
本当は浮かれて阿呆面を晒す俺を期待して、いざ俺がそんな醜態をさらすと食い物にしてやろうとしてるんだ。」
その間も彼女は、一言も発さず、ただ、じっ、と俺を見つめている。
よく見ると、彼女の瞳の中には俺が逆さに写っていて彼女を独占している現状に胸を焦がす。
必死に纏った鉄やら、銅やら、布きれから出来た鎧は、その瞳に、その視線に、いとも簡単に焼かれて、剥がされ、隠した本性を暴かれる。
「なのに、
なのにどうして、俺はこんなに嬉しいんだ」
一気に頬は火照てるのに、心臓は心地好いリズムで脈を打つ。
目に溜まった涙が玉になって、次々と頬を滑り落ちる。
頬は涙でぐちゃぐちゃに湿って、それでもぽろぽろ、ぽろぽろぽろぽろ頬を濡らす。
彼女の熱い瞳は俺を捕らえて放さない。
情けなくて、その熱から逃げたくて、視線を落とす。
ふいに頬を包まれた。熱い、熱い手だ。
「何言ってるのよ。
あんたは死ぬほど苦しんできたじゃない。当たり前。」
熱い、熱い手、熱い眼差し、熱い声。
頬が乾く。




