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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第八章 廻る歯車
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廻る歯車9

改稿済

 光を空中で凝縮し小さな光の板を何枚も作り、走ってくる賊の上に配置した俺は、そのまま手を広げたままでいる。


「さて、騎士付きのリムがやることは?」


 俺がテオに訪ねると、


「騎士の防御だ。騎士の身体を守るために、光の盾を作る」


と、テオは近付き続ける賊になにもしない俺に苛つきながら言う。


「そうだな。んでそいつをガゼルたちはリムの攻撃として使う」


「ああ、光の壁にして押し潰すか、光の盾をぶちかます」


 さらに苛つきながらもテオは答えた。


「そうそう。そうすると、穢れがたまり、包帯だらけのミイラみたいなリムが出来上がる」


 テオにはミイラ…がよくわからないだろうが、ガーランド王国遊撃隊のリムは顔色も悪く、包帯まみれで悲惨な姿をしていた。


「そうだが…ファナ!」


 弓隊も焦れて掃射をしようとしていたが、テオが止める。


「だから、こう使う」


 俺は左手で宙に向かってガンクルの引き金を引くと、ガンクルの中で生成された固い鉄が円錐の銃弾なり、青空に飛び出した。


「なにを…」


 速度のある弾丸は、宙の光の板に当たって跳ね返り、一気に加速して胸当てのない肩口に飛び込み地に突き抜ける。


 あまりの高速で痛みが感じなかったのか、男がエントランスまで入り込んだ瞬間、血が抜けた穴から噴き出し、男が止まった。


 ゆっくりと肩に手をやり、己の血がベッタリとついた掌を見て叫ぶ。


「あ…あ…あ!なんじゃこりゃーーっ!」


 絶叫しながらもんどりを打ち、それを見た引け腰の男が後退さろうとしていたのを俺は確認してから、


「弓隊、空に一斉掃射。矢と風で風縛包囲を形成する」


とぴしりと告げた。


 弓隊がテオに目を向けるが、やれ、と顔を動かし、弓隊は一斉に空に弓を向け矢を放つ。


「風よ、来い」


 俺が両手を前に付き出し捻るようにすると、風が矢を掴み取りそれがさらに地に向かって放たれ、逃げ出そうとしている男と肩口を押さえて呻いている男を囲むように大地に刺さったのだ。


 まるで天からの怒りの鉄槌のような衝撃に、男がへたりと座り込みベランダの方を見てきた。


「まだ喋るなよ、テオ」


 俺の言葉が終わるか終わらないかで、階下に怒声が響き渡る。


「百人斬りの豪腕剛健の元楽園騎士団大隊長ラビットである。ジュリアス国騎士団長として、人質を差し渡ぁす!」


 昨日まで仲間だと思っていた賊仲間のラビットが、エントランスにジュリアス国騎士団の制服を着て、重い剣を鞘から抜き放った。


「今後、ジュリアス王国に手出し一切まかりならん!お前たちの命を助けてやるから、ガーランド王国に伝えろ!」


 捕らえていた男が騎士につき出され慌てて仲間のところに駆け寄り、矢で丸く囲まれた仲間に近づけずおたついていたが、急に抜けて天に一斉に飛んで行く様に悲鳴を上げる。


「なかなかの演出家だろう」


 俺はラビットインパクトに笑い、


「ティータ、頼む」


と座ってノーパソを見ていたティータを呼んだ。


「ええ、いいわ。尻、おいで」


 じっと賊を見ていた尻がティータのところに飛んできて、ティータの前に来る。


「あの人たちを追うわよ。いいかしら?」


 尻は何度も瞳を瞬いて空に飛んでいき、ティータは俺に頷いた。


 俺は歩み寄ると、ファナの痩せた細い腕をテオに見せる。


「…な?傷ひとつついていない」


 テオは


「いや、待て。違うところに…」


と、ポンチョを剥こうとして、俺は首根っこを下からふん掴んだ。


「先に、声出せ」


「あ…えと…」


 テオは慌てて


「これはジュリアス王国、国王の温情だ。忘れるな!」


と叫んだが、既に男たちは麦畑に走り込んでいて、聞こえないようである。 

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