表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第八章 廻る歯車
86/226

廻る歯車8

改稿済

「どうしたんだ、これは」


 全く知り得ないと、シャルルがテオに詰め寄る。


 テオは浅黒く偏食した腕を隠すために、ハイムの手から逃れようと暴れるが、簡単に捕まえているようだが全く抜け出せないでいた。


 見るに見かねたのか、ソファにどっかりと腰を降ろし、白のリムの可憐な様子を眺めていたラビットが、己のスキンヘッドをパシパシと叩き、困ったように言う。


「お前の代わりに、屋敷の守りに出たんだな。なまじ剣技があるだけにいかんな。突出してしまう」


 テオとシャルルを狙う賊に狙われているのは知っているし、弓隊の迎撃のあと王国騎士を向かわせる形を作り出し、成功していたはずだ。


 わざわざ王自らが出ていく必要もなく、シャルルもそんな小さな迎撃には参加したこともない。


「何故、こんな無茶を!」


 多分、扉を守る騎士にも聞こえているが、しかし声はさらに高くなった。


「テオ、いや、テオドール!」


 言葉を切りテオの前で片膝をつき、テオを見上げた。


「お前は…いや、貴方はこの国の王だ。貴方が死んだら、この国はどうなる!しっかり考えていくれ!」


 次王になる予定の義弟は、まだ小さいしな、義理母は優しい美しい人だが、身体が弱く政務には耐えられないってシャルルは俺に話していた。


 ましてやテオがいない世界で生きていけるほど、シャルルは強くはないだろうよ。


 そのまま泣きそうになり、シャルルは立ち上がるとテオを抱き締める。


「穢疽は消えてはなくならないんだ…お前の美しい身体に…こんな…ひどい…」


 愛され満たされたリムは刺すような痛みは無くなるものの、人を傷つけたリム体内からの毒素による肌への沈着は抜けはしないのだが普通だ。


「だって…蛇毒は…抜けないだろ?俺は奴等が許せなくて…」


 同じ背格好のテオはシャルルを抱き締め、愛しい同じ血を分ける伴侶の背を撫でていた…宗教画みたいに。


「ごめん…シャルル…ごめん…」


「お前が死んだら…俺も死ぬ…テオ」


 その様子を見ていたハイムが羨ましそうに見ていたが、俺はティータに服を引っ張られた。


「マスター、時間切れ」


「麦畑を越えたか…ありがとう、ティータ。行くぞ」


 ティータが顔を真っ赤にして頷き、俺が二階のシャルルの部屋のベランダに出るのに続く。


「ティータ、いいか?」


「ん、大丈夫。尻は元気」


 集めていた尻の一匹をベランダのところへ持って、ティータが隅に小さく座りノーパソを開き、ハイムがティータを庇うように前に立つ。


 俺がベランダに出ると、ラビットもわざわざベランダに出て、すでに左右から狙いを定めていた弓隊の動きを静止してくれ、ジューゴに時間を与えた。


「ありゃあ、酒屋で飲み過ぎて合流できなかった二人だ。仲間を回収にでも来たかな」


 どうやら『お仲間』らしいがラビットは、


「殺すか?」


と俺に聞いてくる。


「いや、肩を撃ち抜く。ラビット、手伝ってくれ」


「おう、何でも言ってくれ」


 俺はラビットに提案を話してラビットが階下に降りていくのを確認してから、ポケットの中のガンクルを取り出すと構えた。


 本来の拳銃からはほど遠く、赤い鉄色になりバレルが短く、しかも弾を装填する場所はない。


 まるでマスケット銃のような可愛さにほっこりするが、威力は高い。


「さあ、お飲み物を」


 重吾の血袋を銃口から飲み込ませ、準備完了だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ