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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第八章 廻る歯車
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廻る歯車7

改稿済

 ハイムの簡単な自己紹介がスルー程度で終わるのと、ティータの索敵が終了するのが同時で、ティータが異形の黒い羽を生やした物体に囲まれているの使用人が遠巻きに見つめていた。


 ティータが歩くたび、じわじわ廊下の端に後退さる使用人をファナが見ていると、ティータがわざと意識してやっているのが分かる。


 誰も近寄らず使用人や騎士すらもどん引いていて、そのままシャルルのいる部屋へ入った。


 白い布で覆われた部屋の重厚な机で書類と格闘していたシャルルが魔が物的な光景に目を見開き、ティータは一匹の尻を鷲掴むと、シャルルに差し出し、


「シャルル様、尻、あげるわ。これでファナ様といつでも連絡取れる」


「尻?」


「そう、尻。ファナ様が教えてくれた」


 だから、発音が違うんだって、シを起点に、リは上がるんだってば!


と、俺は心の中で血を吐くように絶叫していたが、顔は平静を保っていた。


「これは………確かに尻だな…割れ目。なんと目がある!」


 手渡しされた尻を撫で回したシャルルが、大きな一つ目に驚き、落としそうになるが、尻はちょこんと机に降り立ち羽を閉じた。


「餌はいらない。ノーパソから送られるから」


 シャルルとテオがまじまじと机の上の尻を眺めていて、シャルルがなでなでと撫でている。


「可愛いな…尻」


 嬉しそうに言うシャルルに、俺は滅茶苦茶驚いて、


「え、うそお!可愛いか?これ」


と、すっとんきょうな声をあげてしまった。


「可愛い…か?」


 俺は尻を手に乗せてまじまじと見ているが、辺境のゲームの中ではどう見ても木っ端悪役っぽいフォルムのそれを可愛いとは思えず、苦笑いをするしかない。


「いや、ティが一番可愛い」


「ハイム、お前なあ…ここで言うことじゃないだろーが」


「しかし、王様」


「いや、テオが一番美しい」


「ティの方が…」


「やめないか!シャルル、ハイム!」


 シャルルが自慢の兄を前に突き出して、テオが真っ赤になって反応しているところを見ていると、こいつら同じ十五歳なんだなあと俺はぼんやりと思った。


 まあ、ハイムは見た目死体の重吾より年上に見えるのだが、アラブ風の容貌と服装、それに再び生えてきた無精髭のせいかもしれない。


「ああ、思い出した。知らない人来ていたわ」


 ティータがノーパソを出すと画面に、尻が見たものをシャルルとテオに見せた。


「これは…」


 シャルルが驚いて呟くと、


「尻の見たものの記録。見覚えある?」


ティータの問いに、テオもシャルルも否と告げる。


 まだ青い麦畑からじわりと身を低くして出てきた男二人は、明らかに騎士の様程で、皆殺しになったと言う東の駐屯地の楽園騎士に似ていた。


「俺が…」


 シャルルが部屋の端に丁重に置かれている銀の甲冑に進みよろうとしたのを、俺はやんわりと止める。


「リムを傷つけない闘い方を、ティータと考えたんだが…」


「リムが傷つく…?まさか、テオ!」


「うん、シャルル様見てみろ」


「ひゃっ…やめろっ…」


 黒のリムコートに隠していた両腕を掴み、ハイムに命じてテオをはがいじめすると、手首から肘にかけて、青茶に変色しているのをシャルルに見せた。

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