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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第八章 廻る歯車
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廻る歯車6

改稿済

「お前が国王?」


 ラビットが剣を鞘に収めて、呆れたように言う。


「成り行きで」


 ファナは無造作に頭をがりがりと掻きながら、困ったように告げた。


「国民は?」


 ラビットが腕を組みながら、考えるように言う。


「あー…ティータとハイム、俺含めて三人」


 ファナはラビットの顔を見られず、横を向いて下に視線を落とし告げた。


 何度目かの同じ会話の末、ラビットが天を仰いだのを見て、ファナは苦笑いをするしかない。


 元々風穴を塞いで、そこを管理するだけの国だった。


 それも解決した今となっては、風穴を見ながら花冠でも作りつつ、のんびり暮らすだけだ。


「王様、降りていいか?」


 ハイムが窓から立ち話のファナへ声を掛けて来て、


「あ、わり。いいぞ」


ハイムとティータが飛び出して来ると、尻たちが一斉に空を飛ぶ。


「ティータ、索敵してくれ」


「ん、わかったわ」


 ティータのリムと小脇に抱えたノーパソのリムが光り輝くと、ティータの回りを飛んでいた黒い桃に蝙蝠の翼を生やしたようなフォルムの尻が散っていき、一匹だけファナの肩にバランスを取って乗っていた。


「ほら。ティータ、ラビットにあいさつ」


「はい」



 ぺこりと頭を下げたティータのフードを見て、渋い顔をしていたラビットが目を大きく見開いた。


「お、おおーーっ!」


 ティータはびくりと動揺しファナにしがみつき、ハイムがあいさつすらさせてもらえずわきわきと物欲しそうにしている。


「お嬢ちゃん、俺の作ったリムコートを着てくれているのか?」


 ファナのリムポンチョのフードには兎耳が、ティータのものには猫耳がついていて、本来のフードには無いものでリムたちは敬遠していたものだ。


「やっぱりあんたの製作品か…」


「少し気に入っているわ」


 ファナにティータがにしがみついたまま、強面のラビットに頷いている。


 ラビットがなにやら武者震いのように拳を握りしめ、その拳を天に上げて胸元に寄せた。


「王様…この凄そうな人は?」


 一人取り残されていたハイムが、明らかに強そうなラビットの顔を見ながら、ひそりと身体を縮めてに背後から呟く。


「ハイム、お前も指南してもらえよ。ラビットは、楽園騎士団大隊長らしいぜ」


 ファナの言葉に驚いたのは、ハイムだけではなく、ラビットになぎ倒されていたジュリアス王国騎士団の、一部事情を知らない若者たちもだった。


「おいおい…」


 先ほどまでのやる気のなさはどうやら、ラビットの前に指南を求め列を作る始末だ。


 しかしラビットの視線は、ファナとティータに向かっている。


「なにかしら?」 


 警戒したティータが尻を呼び寄せる前に、


「テオ、話がある」


とラビットが真面目な顔をして、傍観者に徹していたテオに、向き直った。


「な、なんだよ、師匠」


 ラビットはシャルルは勿論だが、テオにとっても師匠になるべき人物である。


「俺、ジューゴの国に行くな。お嬢ちゃんたちのポンチョを作らねばならん。もちろん指南役はやるが、ファナちゃんの国から通いでな。ちゃんと砂金をはずんでくれな」


 多分、この場にいた全てが、阿鼻叫喚よろしく叫んだ。

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