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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第八章 廻る歯車
83/226

廻る歯車5

改稿済

「中央の町はな、セントラル中立自治区として、ガーランド王国の配下にはならず留まった」 


 朝食を取りながら、ラビットが話し始める。


 雇っている語り屋は既に移動してしまい、ラビットの話は最新の知り得る情報になった。


「ま、これは俺も飯屋で聞いた話だが、ガーランド王国は東から南下をして領土を広げ、それにともない王国にはぐれ騎士による(レギオ)を作っているそうだ」


(レギオ)(カテル)ではなく?それはまるで…」


 ブラウスとズボンに着替えたシャルルが、ラビットを見上げる。


「そう、力による支配だな。セントラルではこの半月で鍛冶屋が急増。パクチーも鍛冶屋に転職になった。剣を山のように作ってる。注文は周囲の『王国』からも来ているらしい。ガーランド王国のお陰でうはうはだな」


 甘いパンに苦戦してるラビットが話してくれたことは、北の外れにいるシャルルたちには苦々しさの連続だった。


「第一、お前たちを狙ったのだって大聖堂を占拠し、グランツの遺体を人質に白の楽園を召しとる寸法だったわけだ。勘づいた楽園騎士団は白の楽園まで撤退し、カミュも楽園に向かった。俺は語り屋が酒を飲みながら繰り返してたジュリアス王国は、お前たちの親父さんの名前を思い出して、賊に入ったんだ。それとな、お前らの交友国のグランディア王国も奪う計画があってだな…」


 シャルルとテオは思わず顔を見合わせた。


「で、誰なんだ。グランディア国王は」


 シャルルはなんとか我慢したが、テオは我慢しきれず吹き出した。


「ラビット…自分の目で確かめた方がいい。使いをだそう、ね、シャルル」


 確かにそうだな…と、シャルルも歪む口許を堪えて頷く。


「なんだ、なんだ?とんでもない奴なのか?」


 確かにとんでもない奴だと、シャルルは再び頷いた。







「力任せに剣を振るな。重心を移動しろ」


 力自慢の騎士の一人が、剣指南を依頼されたラビットに力負けして剣を飛ばされ、ラビットが


「次!」


と叫ぶ。


 シャルルから指南された剣術は、スピード勝負であり一撃必勝の打法だが、ラビットは体躯の良い騎士に力をコントロールし複数を殲滅する攻撃を教えていた。


「敵をうまく固めてから、剣で薙げ。恐怖で相手を殺し散らせるようになれ」


「はいっ…」


 賊だと思っていた男が、何をいわんや元楽園騎士団大隊長であったことは、ジュリアス王国数名の剣持ちを鼓舞し、村からも剣を携え騎士になりたいと申し出る若者が急増した。


 村を守るための騎士に、屋敷を守るための騎士と弓隊、守るので精一杯だ。


 シャルルは先だっての闘いで破壊された橋の修復と、近隣の村からの申し出による王国への参入併合の調印準備に追われている。


 テオの仕事は調印式での宣誓だけなので、黒ローブを着て目下暇をもて余していた。


 グランディア王国へは招待を送り昼過ぎには早駆けの馬が到着し、ラビットが屋敷の騎士に剣の指南をしているのも見飽きていると、テオの目に四角い影が麦畑に揺らいでいるのが見える。


 麦畑の真ん中の道を走ってくる鉄の鈍色の四つ輪は次第に近づき、ラビットが顔を上げた。


「ありゃあ、ランクルか?」


 ラビットのしごきに疲労困憊していた若い騎士がほっとしたように、広間を後にすると土煙をあげて止まったランクルの運転席から、ひょこんと子どもが飛び降りて来る。


「テオ、シャルルは無事か?毒消しは……ラビット…?なんであんたがいんの?」


 ラビットもファナを見て、驚いたようだった。


「ラビット、紹介しよう。我がジュリアス王国の友好国グランディア王国の王ファナだ」


 ラビットの言葉にならない雄叫びが、麦畑に響き渡った。

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