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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第八章 廻る歯車
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廻る歯車3

 捕らえた二人のうちの一人から話を聞こうと、縛り上げた男を玉座の前に引き立たせ座らせたテオは、明らかに小物臭い男に寝不足のあくびを噛み殺す。


 六人のうち三人は掃射で射殺し、一人は肩から斬られ、残りの打撲の男と、ラビットがここにはいた。


 早い明け方の朝日が昇り、北の夏の終わりの空気を温くし始めている。


「シャルルはどうした?」


 無頼漢が定着しているラビットが、剣の指南をした教え子であるシャルルがいないことを心配していた。


「シャルルは…少し…」


 テオが言葉を濁すと、


「いや、いい。後で聞こう。ま、こいつに聞くよりも、俺のが詳しいがな。なんでテオとシャルルを狙うのか」


と、ラビットが粗野な仕草で顎をしゃくる。


「詳しいのか?」


「まあまあな、第一こいつらがお前たちを襲撃するのに乗ったのも…」


「てめえら、無視するな!」


 ないがしろになっていた、捕縛された男が叫ぶ。


「ガーランド王国に雇われるためだ!」


「おう、しっかり覚えていて正しい答えだな」


 ラビットがにやりと笑った。


「どういうことだ?」 


 テオの問い掛けに今度は返事をしない男にかわり、玉座の下の段下であぐらをかいているラビットが答える。


 王国騎士の一人がラビットの不敬に声を掛けようとしたが、テオはそれを止めた。


「中央の飯屋で声が掛かったんだな。ジュリアス王国の王か聖騎士を捕らえれば、ガーランド王国で砂金を貰い、騎士として仕事にありつける」


「お…俺たち、土地持ちじゃないやつの仕事なんてありゃしねえ。両親だって兄貴くらいしか面倒見ねえ」


「お、喋った」


 テオのちゃちゃにも関わらず、突然、男が叫ぶように話し始める。


「東の端は作物が育ちにくい。耕しても水をまいても、リムがいなきゃ麦すら育たない。だったら盗賊にでもなるしかないじゃないか!ジュリアス国王か、聖騎士を生け捕りにしたら、騎士の称号が貰えて、家も土地もリムも貰えるって、語り屋の奴らが飯屋で言い始めたんだ。乗るしかねえじゃないか!」


 肩で息をしながら男が言い放つのを聞いていたテオは、


「では、ジュリアス王国の片隅に土地をやろう。そこを耕し作物を作り、砂金を貯めてリムを求めるがいい」


と告げた。


「おいおい…ははは…。え……テオよ……本気か?」


 ラビットの苦笑いにも頷き、テオは真面目に向き直る。


 ガゼル遊撃隊の攻撃から半月、何度も小刻みな襲撃を受けていた。


 もしも、この男の言うように貧困が原因であるならば、この面倒臭い襲撃を土地を与えることで終わりにしたいと考えていたのだ。


「はあ?土地を貰ってちまちま耕すわけないだろーが!」


「え…?」


 男が呆れたような、いや、馬鹿にしたように笑う。


「楽して…楽して砂金を得たいんだよ!楽して土地を得たいんだよ!リムもいない土地を耕すわけないだろーが!」


 開墾は骨が折れる…しかし、自分の財産になる。


 それをやりたくない男の発言に、テオはため息をついた。


「連れていけ…」


 テオはラビットに顔を向ける。


「残念だったな」


「うん。部屋に行こう…」


 扉の向こうに連れて行かれる男の、罵るような叫び声が胸に痛かった。

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