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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第一章 フーパの屋敷にて
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フーパの屋敷にて7

改稿済

 道案内かたがたラビットの話しには、楽園騎士団の本部は、北の楽園と南の楽園の真ん中にあり、リムを守る楽園騎士団の支部のとりまとめをしているらしい。


 プラス辺境人の保護だ。


「ランクル、ここで待っててくれよ」


 軽い振動が合図でランクルのヘッドライトを撫でると、俺は運転席から飛び降り、ラビットに俺の死体を降ろしてもらった。


「リムがなんの用…ラビットた…」


「よう、お疲れさんだな。カミュはいるか?」


 改造団服を着る死体の重吾は楽園騎士団の一員ではないただの死体で、楽園騎士団の本部の敷地に入るのにも一定の決まりがあり門番が名目上『とうせんぼ』しているのだが、通りかかった知り合いが門番を制してくれた。


「タオル巻きか…本当にリムらしくない」


「なんだ、ダクラムとやら、全裸の美少女好きか、このロリコンめ」


「ろりこん…?辺境の言葉か?」


「……もういい」 


 不遜な呼び掛けあいに応じたダグラムはちら…と俺を見下ろしたが、それ以上は何も言ってこず、俺の死体をラビットから預かると肩から担いで運んでくれた。


 やれやれ助かる。


「あの、ダグラムさん、こんなに大きな生きた鉄始めてみました。鉄の四つ輪に触れてもいいですか?」


「俺の四つ輪ではない。このリムのものだ」


 意外そうな野郎の顔、しかし、車好きに悪い奴はいないしな。


「あ?ランクル?いいぜ、優しくしてやってくれよな。俺の相棒なんだよ」


 歓喜の声を上げて、少年のような顔をしながら門番が、


「ランクルさん、失礼します!」


とランクルのボディを撫でていて、ランクルもまんざらではない様子で体を揺すっていた。


 ランクル人気にあやかっている感ありだな…まあ、ご機嫌を損ねても、俺がハンドルを握った瞬間、門番が全力で逃げればいいことだし…と、早足でダグラムに付いて行く。


 結構上背のある奴だな…ダグラム。


 裸同然でちょこちょこ歩き、楽園騎士団の石造りの二階建てに入った。


 一階は本部八隊の詰所らしいものがあり通り過ぎると、


「大隊長に会いに行くぞ」


と、二階への階段を上がっていく。


 二階建ての中央の荘厳かつ堅牢な合わせ扉は、腕のいい職人が一刀彫で彫り上げたらしく、蔦のからまる美しい幾何学的な何かしらが、過去高校の教科書か何かで見たような気がした。


「カミュ副隊長、よろしいですか?」


 ダグラムがノックをすると返事がして、扉を開くと壁一面に赤い背表紙が並ぶ本棚が圧巻で、大きな机にも大量の紙があり、男が顔を上げた。


「ダグラム隊長…リム…と黒髪の…それはなんですか?」


「辺境人の生きた死体です」


 丸眼鏡をした柔和な美しさを称える顔が破顔し、猫のようにしなやかな仕草で立ち上がり歩み寄ると、死体の報の俺の痩身をさわさわと触り始めたのだ。


「おおおおおさわり禁止っ…股間タッチすんなー!」


 ぞわわわ…と悪寒が走り、慌ててダグラムを引っ張った俺を追いかけるカミュと呼ばれた男は、なおも触りまくってくる。


「生きた死体の辺境人なんてすばらしい。しかも生温かい……おや、君は…リムかな?」


 やっと本題に入るとばかりに、ダグラムがため息をついて、俺をカミュの前に差し出し部屋を出ていった。

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