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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第八章 廻る歯車
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廻る歯車1

 ガーランド王国が『王制』を宣言すると、あちこちの領主が訳もわからず『王国』として名乗りを上げた。


 自分の名前や縁ある名前を頭にした、王国と言う響きは、格好よく感じたのだろう。


 領地制度の最大の利点は、開拓した土地はその開拓者の領地になることであり、つまり不可侵である。


 しかし王国制度には、それは通用しない。


 王の宣言による支配か、友好的に手を携えるか。


 そっとしてもらえる辺境の価値のない場所ならばいざ知らず、王制は支配欲を膨らませていく。


 ガーランド王国は遊撃隊を指揮南下していくと、フーパ領をあっさりと召し上げ、林檎の森のお館様を殺すと同時に属領とした。


 昨日着いた語り屋によると、中央も平静に構えているが、不安が見られると言う。


「ん…」


 テオは明るくなりつつある白い部屋の寝台からそっと起き出し、部屋の執務用の広い机の上に、クサカが作らせた地図を広げた。


 ちらりと広い寝台を見ると、うつ伏せになったシャルルの痛々しい脇腹の包帯が見えて目を伏せ、地図に視線を移す。


 黒の楽園襲撃襲撃から、たった半月なのだ。


 まだ完全に傷の癒えないシャルルを見ていると、ガーランド王国の進撃の速度に恐れをなす。


 地図は上に最北ジュリアス王国があり、そのすぐ東側アギト川の源流一帯とアギト川の河岸中流のクサカの家までがグランディア王国、支流のイア川一帯の広大な東がガーランド王国で、じわじわ南下しているようだ。


 ガーランド王国の目的は、なんだろう…すべての領地の統合か?


 そもそもそれに意味があるのか?


 テオとシャルルの治めるジュリアス王国には、開拓者が耕したいくつかの領地がある。


 それらは村となり、親族や頼るものが集まり、代表である村長が存在していた。


 代々の直轄の領地と…自治領地を併せ持ち、安全と平和を約束していて、それはさらに強化された。


 シャルルの屋敷には自警の騎士が控え、領地人の安全を賊から守っていて、黒の楽園の生き残りの騎士も

こちらに加わっている…怪我が治癒してからだが…。


「国王…テオドール様、起きていらっしゃいますか?」


 父の代から仕えている老人が、小さな声で扉の向こうから話しかけてきた。


「うん、どうした?」


 黒のローブを羽織り重い扉を開いて、老執事の前に立つ。


「賊が侵入を…シャルル様は?」


「寝かせたのは夜更けだ。寝かせておいてくれ」


 ちらりと見える健康的な肌色は、規則的に呼吸しており老執事が、


「連夜のお戯れは…程々に…」


と苦言を呈してきた。


「ふふ…まあ、そう言うなよ」


 小さい頃から人と分け隔てなく育つテオは、老執事に苦笑いを見せる。


「一度解き放たれると、歯止めが効かなくて。俺の剣を出してくれ」


「弓隊を配置しましたが?それに貴方様が出られますと…」


「うん、人である賊に向けると、俺の身体に壊阻が出る。しかし、奴等に任せると死体しか生み出さないだろ」


「はあ…承知しました」


 老執事は従わせていた使用人に持たせていた、銀の剣と対になる金のレリーフを施した鞘に入る剣を差し出した。


「弓隊が散らし損ねた賊は、ご随意に」


 ガーランド王国が奪い損ねたジュリアス王国は、今だガーランド王国に野望に苛まれ、はぐれ騎士などが国王と聖騎士を捕縛しようとしている。


 大量のリムを集めたガーランド王国の意図は、多分全ての領地の召し上げで、統一なのだろうと、テオは考えた。

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