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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第一章 フーパの屋敷にて
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フーパの屋敷にて6

改稿済

 なにもない…用事も仕事も…。


 子どもの体温の高さは心地よく一度寝たら起きないタイプの身体のようで、ぱか…と眼を開くと、鼻面に金色の光があり、横倒しに抱き枕よろしく自分の死体を抱き締めて寝ていた俺は


「うあっ…」


と跳ね起きた。


 変化無し。


 うーん、子どもの身体だ。

 

 女の子の身体のまんまだ。


「基本が裸体って…どうなんだよ…」


 いいかよく聞け、俺は警察官だ。


 ただいまの心情としては、中身の俺は小さい子どもの保護者であり父親の心境となってしまい、鏡にうつる完全に女の子の外見をもう一度見た。


 痩せっぽっちの肢体は確かに十は過ぎている手足の長さを感じさせるし、ぺったんこの胸の膨らみ、顔の顎ラインの丸みや、大きな青い瞳が童顔。


 可愛いじゃないか、おい。


「なんだこりゃ」


 鎖骨の胸元に花のような痣があり、それが赤く輝いているのだ。


「…おい、俺、なんかした?」


 振り向いて死体の俺に話しかけるが、もちろん俺の身体は何の反応もない。


 美しく可憐な身体に服を着せたいのだが、バスタオルしかくれないってのはどうなんだ。


 俺はバスタオル女子か!


「おーい、飯を食べるか?」


 ラビットが搾りたてのミルクと黒パンの兎肉ハムサンドを持ってきてくれ、おなかが鳴ったのだった。





 ランクルの助手席に俺の死体を載せ、なぜか後部座席ラビットが乗り込んでずしりと重くなる。


 歩いて少しの距離を車で行くつもりになったのは、もちろん俺の身体を置いておけないからであって、俺は運転席に座ったもののこの小さな身体でアクセルやブレーキが踏めるのかと心配になった。


「お…?」


 生きた鉄と言われる物体になってしまった俺の相棒ランドクルーザーは、どうやら意思があるようでアクセルが届かない俺に気づいてにゅうっとアクセルやブレーキ位置が伸び、俺はスイッチを押した。


 ってまあ、フーパの屋敷からここまでこいつで来たんだから、乗れない訳じゃない。


 だが俺以外では動かないらしく、さっきも珍しがってラビットが乗ったもののうんともすんとも動かなかったし。


 パンに兎肉のローストと野菜を挟んだサンドを互いに口にしながら、楽園騎士団の本部に走り出す。


「本当にお前さん見かけはリムで中身は辺境人なんだな」


 ランクルはご機嫌に平坦な道を走り、俺は兎サンドを口に運んだ。


「だいたい、リムってなんだよ。ヒト族って…」


 一瞬、屋敷にいたリムの扱いを思い出し、警察官魂に火が付くって感じだ。


「俺にはうまく説明できんがなあ…リムって…」


「…うおっ、猫っ!」


 キーッ…


 俺は急ブレーキを踏んでしまい、ランクルが不満気に唸りを上げて停車した。


「ご…ごめん、俺の身体大丈夫か!」


 シートベルトがあってよかった…というか、ランクルのシートがにゅっ…と伸びて俺のボディを包み込み、窓ガラスとの激突を避けてくれた。


 ラビットと土埃を上げていきなり停車させられたランクルにも謝ると、猫をよけて止まったあと後ろから来た馬車に道を譲り道の横に避ける。


「リムってのたいがいひどい扱いを受けてるな。基本的に下僕だ。マスターの質にもよるが、使い捨てや切り捨てもあるしな。特にお前さんのような『欠損(かけ)』には厳しい」


 なるほど…と、俺はファナの色ちがいの瞳を見た。


 ファナの目の玉…光彩は透き通るような青だが、強膜…白眼が色ちがいで、右目の白で在るべきところが、黒い。


「たしかに他人は自分と違うものには厳しい傾向がある。どちらの世界もこんなもんなのかもなあ…」


 さて、細かいことは楽園騎士団長とやらに聞くとするか。 

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