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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第七章 電脳のティータ
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電脳のティータ1

 ティータは朝日の薄明かりに目を開き、ジューゴの脇の下から這い出した。


「ん…っ」


 伸びをすると、両の胸の下が痛い。


 少し大きくなった気がする…背はあまり伸びていないのに…。


 痩せて背の高いファナとは違い、丸みを帯びてきた身体に不安がつのる。


 ティータは冬には十二歳になるのに、一度もマスターを得られないでいた。


「朝ごはん…」


 ファナとジューゴはまだ眠っていて、寝台から降りると、


「無理すんなよ」


とジューゴがそのままの格好で、声をかけてきた。


「大丈夫、心配ない。ファナ様まだ寝てるから」


「うん」


 ぼさぼさになった髪を手櫛で整え、ポンチョを着ずリビングダイニングへ向かう。


 ハイムは誰よりも早く起きて、兎を捕りに行っていていないから、裸でも大丈夫だ。


 虫の布でも長い間着ていると疲れてしまい、眠たくなる。


 ファナの睡眠が長いのは、多分そのせいだろう。


「パンに肉をはさんで…新しい葉っぱを…」


 ファナが食べられる葉を森から聞いていて、少し苦味があるがジューゴが教えてくれたタンポポの葉を入れたパンを四つ作った。


「うん、出来た」


「あれ、ティ……うわっ…」


 ハイムが兎を捕まえて戻って来て、ティータの裸体を見て、後ろを向く。


「う…」


 仕方なくポンチョを持ってこなければと、部屋へ戻ろうとした時、ハイムがふわりと虫の布をティータにかけてきた。


「切りっぱなしの布でごめん。でも…俺…」


 リムのいない地域で育ったハイムにとっては、リムは憧れらしい。


『興味だけならば、犯せばいい。私、慣れている』


 ファナに歯牙がかけられる前に、ジューゴにも内緒で、ハイムに持ちかけたことがある。


 ハイムの部屋で全裸になったティータに、


『俺は、ティの気持ちも含めて…くそ!』


と、ポンチョを被せられた。


 それ以来、少し信頼している。


「ティ、そのリム…一度も輝いたことがないって本当か?」


 カップに水を入れて、ハイムが椅子に座ったのを見て、ティータも反対側にちょこんと腰かけた。


 虫の布を肩からふわりとかけただけのティータは、自分の胸の赤い花びらの痣を指で触れる。


「リムは五歳になったら、二十日花の度に楽園の箱庭に出される。私、一度もマスターとは会えていない」


 ティータになついていた年下のリムが、フーパをマスターとしたが、外を恐がって無理に着いていった世界は、残酷で満ち溢れていて、ティータが失望していた矢先、ジューゴとファナに出会った。


 二人のような自然の温かさが、ティータの掴みたかった世界なのに、ティータにはそれは望めない。


「もし、ティが嫌じゃなかったら、ずっとここで暮らせばいい。俺はマスターにはなれないが、いい夫でいることは出来る」


 ティータの胸のリムを指差して、ハイムが男臭い笑いを見せた。


「ど変態。リムと婚姻なんて、世間の笑い者」


「う…。全てを敵に回しても、俺はティを…」


 起き抜けのジューゴが頭を掻きむしり、声を張るハイムの頭を叩く。


「…いでえっ!大将っ」


「朝からうるせえよ…。お、ティータ、いいもの身に付けてるな。ショールかよ…。これなら来客が来たときに、さっと羽織れるな」


「ど変態がくれた」


 ジューゴが少し驚いたような顔をして、それからニヤリと笑った。


「やるじゃん、ハイム。全裸美少女もいいが、チラリズムもか、マニアックだな…」


 今度はハイムが驚いたような顔をして、それから頭を抱えたのだ。


「…目のやり場に…困るんだよ…。分かれよ、オッサン…」


 ティータの目から見て気があう…と思い、


「変態とど変態、さすが」


と、何がさすがかは自分でも分からず言ってみた。


 しっくりする。


「何がさすが、ですか…」


 寝ぼけたファナが、裸のままぺたぺた歩いて来るので慌てて、自分の肩の布をファナにかけると、


「わーー!ヤバイって!」


とハイムが部屋から逃げ出したのを見て、思わずティータは笑ってしまった。

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