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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第六章 花の守り人
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花の守り人9

改稿済

「あら、私も結構汚れているわ」


 自然に近く『妖精』と呼ばれるリムの基本は、裸体。


 全裸であることが、自然であり普通なのだから、移動などではフードポンチョを髪まで隠して被っているが、家の中では少しでも自然体でいなければ疲労してしまう…らしい…と言うのが通説で俺はポンチョ以外の服も着たい!


「はい、あなたファナ様のポンチョを持っていて」


 ティータももぞもぞと頭から猫耳ポンチョを脱いで、小さな胸の膨らみと子どもから少女に差し掛かる柔かな肢体をさらし、詰めていた息を吐き出した。


「あー、夕方になってきたな…ハイム、食べも…あああ?どーした?大丈夫か!」


「…うっ…」


 ハイムが前屈みになり顔を片手で覆った瞬間、バタバタ…と鼻血を噴き出したのだ。


「はあっ…?」


「ティータ…これ…はははは…裸…!」


 鼻血をタオエルで押さえながら、それでもティータをチラチラ見ては鼻血を溢れさせるハイムに、


「リムの基本だろうが…。鼻血とか前屈みとか若造か…」


と呆れたが、リムを『婚姻相手』として、恋婚対象にしている、男子の正当な反応かもしれないと思い立ち、俺はにやにやとした。


「慣れてもらうしかないぜ?ところで、ハイム年はいくつだ?」


「今年成人したから…十五歳…」


「十五歳!まじか!子どもじゃないか!」


「子どもではない!」


 ちらりとティータの胸を見て、


「うっ…」


と、鼻を押さえ、


「良い夫…良い夫…良い夫…」


と呪文のように唱えるハイムだが、十五歳。


 どう見ても俺と同じくらいか、それ以上にしか見えない。


「ハイム、とにかく身体的暴走を外で止めてこい!ティータに迷惑だ。それから、その無精髭はやめろ!」


 俺の命令にハイムは転げ躓きながら、部屋から逃げ出したのだった。





 この東北の森は、光の毒を湛えた森らしく、作物はうまく育たないが、兎と茸は豊富に取れるらしい森は、そこそこに恩恵をこうむることが出来る。


「おーい、ティータ。遠くまで行くなよ」


「ん、わかったわ」


 家から開けた一帯は花畑だが、そこから周囲はぐるりと森だ。


 兎が目の前を走り跳び、俺が口を開けて驚いていると、投げ輪ロープが飛んできて、兎の首に掛かり捕まる。


 木の端からロープを投げたのはハイムで、得意気にティータの方に見せびらかしたが、当のティータは茸狩りに集中し、毒茸を掴んではかごに入れていた。


「だから赤いのは毒キノコだって」 


「でも美味しそうね。ハイム、食べてみて」


「食べたら、伴侶に…」


「ど変態。食べなくていいわ」


 鼻血と下半身暴走容疑でど変態と認定されたハイムだが、そう呼ばれるたびに幸せそうにしていて、俺は少々気の毒になる。


 無精髭を剃り多少若く見えるようになったハイムは、若冠十五歳歳の若者で、下半身のコントロールが効かないのも無理はなく、成人年齢に達しているから婚姻も出来るわけで…。


ティータにとって死体の重吾と同じ背格好のハイムは、俺と同じ大人に見えるのかもしれないが、いかんせんあいつは草食系の皮を被った肉食系気がして、俺たちは寝室以外ポンチョを着せることにした。

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