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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第六章 花の守り人
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花の守り人6

改稿済

 どうせ、踏みにじられた身体ならば、二人の役にたてればいい。


 そうしたら、ファナ様はこの地の女王様になれるから…。


 ティータはおあつらえ向きにも、粗末だが絹の敷かれた寝台を見て、少なくとも床でひどい目に合うのではないと、猫耳ポンチョを両手で掴んでずるずると脱いだ。


「うわっ…」


 立ち尽くすハイムの前でポンチョを畳むと、リムの最敬礼として膝をつき正座をすると、額を床に着ける。


 じっとしていれば、終わる…。


 ハイムが近付いてくる気配がして、ティータは緑の瞳を閉じた。


 そういえば、背格好は似ているのに、ハイムの瞳はマスターとは違い、藁色の瞳だった…ファナ様と一緒にマスターの瞼を親指と中指で開くと、そこには黒い光彩が見えて辺境人らしいわと笑ってしまったものだ。


 ハイムの手が小さな肩に触れて、ティータはびくりと身体を震わせながら、身を起こしてハイムに従うしかない。


 床…石の床でなくてよかった…と、フーパの屋敷の惨劇を思い出して涙が溢れそうになった。


「あ…あーーーっ!もう、違う、違う!こんなん、違うんだ!」


 ハイムが叫びながら、ティータの頭からポンチョを乱暴に被せる。


「え?」


「だから、違うんだって!俺はリムの女の子と幸せな結婚したいの!こんなやり方は間違っている!俺の意に反している!『ハイムさん、好き』『俺も好きだ…愛してる』的な心の交わりがほしいわけ!なのに、何?この俗物的な展開は!理解できん!」


 地団駄を踏んで叫びまくるハイムを見上げて、ティータは良くわからなくて首を傾げた。


「ティータ!やっぱり無理だ!俺には納得いかん!」


 ガコッ…と鈍い音がして振り向くと、扉の鍵をトンファで叩き落とした小さなファナががくるりと一回転して飛び込んできて、


「きゃ…」


反動、ティータは手を掴まれハイムとの距離を取らされた。


「国と引き換えなんて、絶対に無理だ!」


 ファナがティータを背の後ろに隠し、トンファを左手に構えた。


「だーかーら、違うんだって!俺は、ティータの夫になりたいだけなんだ!」


「はあああ?」


「……ど変態」






「で、ハイムさんよ、一体何がどうしてこうなったわけよ」


 木のテーブルを挟んで対峙する、被疑者ハイム、被害者ティータで、警察官重吾の魂を持つリムの至高である俺様が呆れながら頬杖を付きながら尋問する。


 ハイムは男らしい濃さを見せる眉を寄せて、深く深く溜め息をついた。


「俺は西の島育ちで、リムを見たことがなかった。語り屋が来てさ、リムがどんなに美しくて可愛い生き物か知ってから、いてもたってもいられなくて成人してから家を出たんだよ」


 西か…そういえば、西の話は騎士団でも聞いたことはなかったと、俺は表情を崩さずに聞いている。


「アギト川の下流でテオと会って、結婚を申し込んだけど、秒速で断ら…」


 俺が頬杖からずり落ち、顎を机で打ち付けた。


「結婚を申し込んだだとーーっ!」


 そのまま両手で体勢を整え、バン…と机を叩いた。


「あれは男だぞ!」


「だから、やめたんだ。リムは女の子がいい。ティータは可愛い、だから結婚…」


 ハイムの言葉も半分俺は叫んだ。


「結婚だと?ティータはまだ十一歳だぞ!何考えている!ハイム、お前はロリコンか!変態だな!そうかそうか、お前はそんな奴だったんだな!」


と、沫を撒き散らすかの如くだ。


「うるさいわ。リムは五歳で成人よ。でもリムを伴侶に持とうなんて、それこそお馬鹿さんよ。家畜を伴侶にするなんて、馬鹿げているわ」


「リムは……家畜じゃねえ!俺は家畜のつもりもねえよ…俺は…」


 ティータの冷たい言い放ちにぐうの音も出ないファナね身体を持つリムである俺は、


「で?」


と目玉をひんむいて面食らっているハイムに咳払いをして座り直すと、ハイムに続きを促す。

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