フーパの屋敷にて5
改稿済
服が着られない。
由々しき問題だ。
俺は鏡にうつる『ファナ様九歳』を見た。
ちなみに俺の身体はベッドに寝ている。
真っ白ですけるような肌と、痩せすぎなくらいの細い手足とらさらさら金髪に碧眼…むちゃくちゃ美少女に、すみません二十五歳警察官の魂が…まじか?
俺の相棒警察車両ランドクルーザー…ランクルだって、塗装がなくなり鉄色になるし、何が何やらわからない。
「ここはアーバーグランド大陸だ。グランツ達がつけた名前だ」
ラビットが唯一何とか身体に巻けるバスタオル…タオエルというらしいが…を出しつつ話してくれた。
「リムのくせに」
と、騎士にげらげらと笑われる。
「なんなんだ?」
「辺境の黒髪の兄さんの持ち物なんだな、このリムは」
ラビットの言葉に、
「だから変わってるのか」
と馬鹿にされたように笑われ、騎士に「一杯おごりな」と、ラビットが麦酒を陶器ジョッキで渡すと、騎士は俺の死体に向かい乾杯と杯を上げてから、ラビットの横でわいわいと話し始める。
バニーガールも中で笑っていて、その姿を何となく眺めていると、茶色の長い髪をひとつにまとめてアップにしているバニーガールと目が合い、嫌そうな顔をされてしまった。
リム嫌いなんだよ、あの子はな、とラビットに言われて、自分のことではないのに、自分に降りかかった嫌な気分に俺はベッドに転がった。
「眠れん」
俺は月明かりの差し込む真夜中のベッドに転がり込むと、大の字になった。
「あーあ…」
アーバーグランド大陸なんて世界地図にはないし、辺境人と言わる筋合いもないこの世界は、まるでヨーロッパの片田舎だ。
まあ、世界旅行に行ったことはないけど。
焦りがないと言えば嘘になる。
「寝れん…」
声が女の子なのにも違和感ある。
「きゃあ…なんてな」
月明かりを一身に受けた美しい少女はどんな風に生きてきて、なぜ縊られたのか。
再び鏡を見る。
抜けるような白肌色に、金糸の髪は横髪だけ顎ラインでカットしてあり、長い髪が幼い顔を少しだけ大人びて見せていたが、丸い頬と大きな青い瞳がまだ、庇護下に置かれるべき年齢だと理解させる。
なにより全裸の肢体はまだ小さく細くしなかやで、いや、痩せっぽっちの鎖骨の真ん中で、赤々とした不思議な花びらが輝いていた。
「明日、騎士団の本部にいくから、寝ろ、俺」
生温かい体温…不謹慎だとは思うが、ベッドは一つで譲る気はない。
俺は死体である俺の身体横に潜り込み、やっぱり違和感のあるバスタオルを外すと、ファナ様に申し訳ないと思いつつ寝た。