生きた死体の洗い方
改稿済
「ファナ様、マスターが臭いわ」
俺はふんふんと死体の重吾の臭いをかぎ、そのスメルが死体独特の臭いではなく、お兄さん臭…加齢臭じゃない…にこくんと首を縦に振った。
月明かりは淡い光に溶けて、自然に近いリムたちは起き始め、箱庭をぐるりと囲む小さな部屋たちから、静かに死体の重吾と俺とティータのいる部屋を遠巻きに見ていた。
「なんか…怖いな」
俺は身の危機を感じて死体の重吾の前に立った。
「大丈夫、あなたはモルト。呼ばない限り来ないわ」
「本当か?」
「本当よ。それくらい分かりなさいよ、お馬鹿さん」
これはファナ様にではなく、間違いなく俺に言っていて、ティータは深く息を吐く。
「マスターをお風呂に入れましょう」
「へ?」
「だって臭いもの。ポンチョは脱いで、一緒に入れば問題はないわ」
いやいやいやいや、問題あるでしょーーー。
だが、ティータが重吾の服を苦労して脱がせはじめ、ファナにはない下半身のものを指差す。
「あら…ちゃんと男性なのね、マスター」
見られた…全部…見られました…。
大人一人に子ども二人の湯船は狭かったが、臭いと言われた全身を二人で泡だらけにして、俺はティータに頭を洗われてタオエルでしっかり拭き、三人で朝風呂を堪能した。
「これで大丈夫、臭くないわ」
大の字になっている重吾に服を着せるのが…正直…めんどくさい。
もう少し簡単な服はないもんかな…。
俺は生きた死体のケアを正直考えているところだ。