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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第四章 楽園へようこそ
37/226

楽園へようこそ3

改稿済

 鉄の翼を縮めたランクルが川の横に降り立つと、俺はリムの少女たちと柔らかな草むらに降り立ち、俺はランクルと川の中へ入る。


 ブルネットのリムがまだ小さいリムの横に座り、じいっ…と俺とランクルを見つめついて居心地が悪かったが、俺は全裸のまま川でポンチョと身体を流し洗うとタオエルを肩に掛けた。


 緑の草に腰程度の川…美しい景色の向こうに白亜の建物が見える。


「ランクル…ごめんなー、今洗うから」


 俺はランクルの運転席を必死に川の水で流してからランクルを引き上げ、岸の焚き火に近い木に服を干し、ブルネットのリムの横に座っていた。


「ええ…っと、大丈夫か?」


「私たちは平気。リムはヒトではないから。仕方がない」


 ひどい扱いを肯定するしかないその言葉に、俺が言葉を発することが出来ないでいると、


「あなたは、誰?」


と、小さく呟く。


「ファナ様ではない」


「う…ファナの中身は…辺境人…だ」


 驚くリムを目の前にして、ランクルの中にいる死体の重吾見ながら、俺は俺が理解できているだけのことを話す。


「ファナは…もう死んでしまっていて…俺はなんでか魂って言うのかな…身体に入ってしまい…。俺の外見はランクル…鉄の四つ輪に乗っているあれなわけ」


 それだけ…それだけしか分からないんだ。


「ファナ様から出て行って!」 


「うぐっ…それはやまやま…」


 そりゃあ、俺だってファナにファナの身体を返してやりたいよ?


でも、ファナの魂って…元に戻るのか?


 ブルネットのリムが怯えてるのか全く喋らないリムを抱きしめて、俺を睨んでいる。


「あなた、風を操っていた」


「ファナが力を貸してくれたんだ。俺はだから君たちを助けられた」


 やっと乾いた頼りないリムポンチョコートを羽織り、俺はフードを被ると火が弱くなって来たところに手をかざした。


「火よ…」


 多分…ファナと意識がクロスした時、ファナのリムとしての力を俺が使えるようになったみたいで、火土風水の全てにおいてファナは力を持ち、湧き上がる力を冷静にコントロールしないと、小さい身から暴走しそうになる。


 ブルネットのリムが眉を寄せているが、火は赤々と燃え上がった。


 額を左右に分けたブルネットのリムは子どもらしく可愛くファナくらいの背格好だけど、大人びた感じと幼さを感じさせる…多分あの固い口調のせいだろう。


「本当に…リムの力を…ファナ様は苦手としていたのに…」


「コントロールは結構厄介だぜ?なんつーか、気を抜くとこの草はら丸焼きにしそうになる」


と俺は白目が黒い右目を片手で押さえ、目立つ右目の中に光を屈折させて白目に見せかけた。


「そんなことまで…」


 考えたことを脳内で明確にしてやると、それが出来るってわけだが、大きな力を使うにはどうやら声に出した方がいいみたいだ。


「俺はファナから俺の魂とやらを出して、俺の死体に移すために白の楽園に行く。君たちはそのついでだ。お土産みたいなもんだ」


「意味がわからない…でも…あなたは悪い人には見えない」


 ブルネットのリムは静かに呟いた。


「ファナは…優しい子だったよ。なんでクサカセンセイとやらは王にしたかったんだろうな…。向いてないだろーが」


 真っ赤になり震えて泣き声も上げられず動けないでいるブルネットのリムは、何度も頷き、


「ファナ様をよく知っる…あなた…」


と俺を監視するように見てきた。


「いやあ…成り行きでね…。君、名前は?」


「マスターがいないから、名前はない」


 俺は


「そっか…悪い」


と謝る。


「夕方になる。少し急ごう」

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