楽園へようこそ2
改稿済
リムポンチョコートは寒いだろう…俺としては我慢したい、そう、我慢だ。
「くっ…そ!」
少しだけ後ろを向いて心配になったリムたちに身体を捻った瞬間、びくりと肩を震わせる。
ハンドルの縁がファナの下腹に当たり、
「やっ…やばいっ…」
と身を縮める。
「ファナ様…なにか…?…………え?」
「…あ!」
膝をぴったりと閉じた俺は女の子らしい声を出して、びくっ…と身体を震わせた。
自分の下肢がじんわりと温かくなるのを感じ下を見下ろすと、背中まで真っ赤になったまま俺は片手で顔を覆い、時たまひくっ…と震えた。
これは…しかし…まさかの…いやいや、ないない…だが、外見ファナの首筋からは、二十五歳の俺の精神から恥ずかしさのあまり湯気が出そうだ。
「す…すまん…落ちるまで窓…開けるから…」
それだけを言うのが精一杯で、俺はおもらしと言うより、出し切った感じ半端ない染み込んだリムポンチョ布を纏う身としてただひたすら無言になる。
微妙な沈黙が流れ、突然、
「ファナ様」
と声がした。
「はひっ?」
「あなた、ファナ様なの?」
後部座席にうつ伏せていた柔らかなブルネットの巻き毛のリムが、乱れた髪を掻き上げて起き上がる。
森を柔らかい歴史を再現したような琥珀の深い瞳で、俺的なファナを見上げていた。
明らかに、これはまずい状況で、どう伝えるかを考えるしかない。
見た目は少女、中身はお兄さん…二十五歳をおっさんとは認めないが、ただ今お漏らしをした中身は大人を見つめているリムの視線に、居たたまれない気持ちになって嫌な汗が噴き出した。
「ファナ様はそんな喋り方をしない」
「いや…っ、これは、あのっ…」
俺、万事休す……だが、リムが下を指差し、
「白の楽園の管轄に入った。下の川に連れていって」
と冷静に呟くのに俺は
「はい…」
と頷き、ランクルの翼を傾けて川のたもとへ向かうしかなく、あとは無言でゆっくりとランクルを降下させて行った。