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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第四章 楽園へようこそ
35/226

楽園へようこそ1

改稿済

 風に巻き上げられていたリムポンチョコートを窓から鷲掴み、ちっこい身体でハンドルにしがみついて、


「すまんな、俺の死体、耐えてくれ」


返事は期待していない…死体だもん。


そのまま風の吹き上げを操りつつ、ランクルで飛び上がり俺は奈落の道で驚き見上げている女…チロルハートを見下ろした。


 リムがいる馬車はチロルハートと黒のリムから離れていて、策士であるガゼルはそれより上にいる。


「ランクル、そのまま岩に着けろ。俺の死体にシートベルト!」


 赤茶鉄肉のベルトがチャイルドシートよろしく、俺の死体にがっちり巻きついた。


 風の浮力により柔らかく斜めに着地したランクルが、道のギリギリを片輪走行よろしくやや斜めに走り始めた。


「なんだこれは!」


 叫ぶチロルハートを通りすぎ、俺はハンドルを掴みながら、


「ランクル、助手席を開けろ!」


と叫ぶ。


 バガッ…と助手席が開けられると、馬車の開いている扉にランクルの開いた扉を無理矢理差し込み、悲鳴を上げ嘶く馬ごと馬車を走らせた。


「よしっ、ランクル、そのまま並走。お前たち、来い」


「ファナ様っ!」


「売られちまうぞ!」


 馬車で震えている二人のリムに声をかけると、ブルネットのリムが初めにそしてもう一人とが必死で這い出してランクルの中に飛び込み、奈落の坂になるつづら折りのところで、体重を運転席の右に寄せ、車体を傾ける。


「きゃあああ……落ち…」


 失速しそうになるランクルの中で、リムたちが悲鳴を上げ、俺の死体がケツクッションになったままのリムがしがみついて来て、俺はハンドル操作だけで精一杯になって叫んだ。


「ランクル。飛べ!翼だ」


 ランクルの運転席と助手席の上部から真横に、飛行機の翼のような形状が伸び、三列目のシートと空間が閉じられる。


 生きている鉄の所以だ…ってびっくりしてる…内心…まじか…。


「よし、そのまま南へ向かうぞ」


 しかし、所詮、推進力のないグライダーみたいなものだ。


 ランクルは奈落から遠ざかり、チロルハートが何やら叫び、ガゼルが顔色も変えずにいる姿を黙視した。


 多分…追っては来ないだろうが、チロルハートやガゼルとはどこかで折り合いをつけなくてはならない気がする。


 そもそもリム狩りをしているチロルハートと、ガゼルは何者だ?


「ファナ様…?」


「無事でよかったな、二人とも。あ、すまないが後ろの席に移ってくれ」


 二人のリムを後部座席に移して、俺は運転席に安心して座ったが、変に違和感があるのに気づく。


 ファナの身体は小さくて、俺はの膝を閉じてブルブル震えながら真っ赤になってきた。


これは…まさか…まさかの…いや、ダメだ!

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