重吾、刻をこえて6
改稿済
結局…俺は…ファナを助けられなかった。
見ていただけで…どうにもできないでいる。
俺は…俺は…無力だ。
ランクルの形状が肉々しいがランドクルーザーの形になりガラスとタイヤが出来、フーパの屋敷のファナの横にバウンドして落ちた。
俺はまだ身動きすら出来ないまま頭から血を流し、それがランクルの鉄の肉を濡らしていく。
俺は…あの少年を助けられたのか…?
一緒にこっちへ来てしまったのか?
もしそうならば、あの少年も助けなきゃならない。
動けよ身体…。
俺の身体はランクルのバウンドの衝撃に耐えられずに、ずるりと扉から出てしまった。
屋敷はフーパの仲間と使用人がごった返していて、俺と死んだファナには興味もなく過ぎていた。
ファナ…死んでしまったのか?
動け、俺!
俺は俺の中で叫んでいた。
「邪魔だな、なんだ、こいつは」
「おい、早くしろ、女隊長が攻めてくるぞ。跳ね橋を上げろ」
死体の俺はフーパの仲間にがっこりと蹴られて、仰向けに倒れていたファナの死体の胸元に顔が乗っかった。
二つの死体。
一つは首を自ら切って血を噴き出し…事切れたリムの子ども。
一つは日本の高速道路からランドクルーザーごと落っこちて来て、頭を切った血まみれの警察官。
俺の唇はファナの消えかけていたリムの刻印に触れ、ファナの刻印が輝きだした。
今から起こるだろう事柄が、俺にとっての現実だ。
う…わ…。
俺の意識は死んだはずの小さな身体に入り、俺と俺の死体との精神的リンクがぷつりと切れた。