表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第三章 重吾、刻をこえて
28/226

重吾、刻をこえて5

改稿済

 俺は…俺は…ファナを助けたい…ランクル!


 ランクルが俺の気持ちを理解したように鉄肉を変化させていき、もとのランドクルーザーの形状に変わっていく。


 意識をファナに戻していくと、フーパが地下牢に入り込むところだった。


「ん…」


 痩せた頰はさらに痩せがりがりになっていて、檻の中のファナにフーパがナイフを投げた。


「主の命令だ……死ね」


 これは…過去なのに、現実だ。


 しかも、今…ここで起ころうとしている。


「え…?」


 ファナはのろのろと顔を上げた。


 金の髪はぼさぼさになり、落ちくぼんだ目が大きく見えてぼんやりとナイフを見つめている。


「お前は凶状持ちのリムだ。主のために死ぬのもお前の勤めだ」


「は…い…」


 ギリギリと噛みつくように胃に痛みが走り、ファナに俺は叫び掛けた。


 ダメだ!


 ダメだ!


「ああ…ここではダメだ…汚れる!外に出ろ!」


「おい、出ろ!」


 外はばたばたと男たちが走り回っていた。


 使用人は呆然としており、フーパはどうやらここの本来の領主を追い出したか殺したか何らかの手段でこの屋敷を手に入れていたようだ。


 慌てているのはフーパの仲間だけのようだった。


 ファナはよろよろと引きずられて草むらに落ち、ナイフを手にしながら目を見開いた。


「お祖父様…どうして…」


「早くしろっ」


 フーパが叫んでから、口の端で軽く笑った。


「お前は凶状持ちの屑だ、ゴミだ。主として命じる死んで主を救え」


「はい…」


「早く!」


 ダメだ!


 ファナ、ダメだ!


 お前はヒトだ。


 ゴミでも屑でもない。


 死んじゃダメだ!


 ファナはうつろな目で正座をし、ナイフを掴むとゆっくりと首筋に当てて…。


 ダメだ!


 こんな小さな子が…自死を…。


 ダメだーーーーーっ!


 ぴっ…と引いた先には白い肌から真っ赤な花のような血が噴き出し、真横に横たわった。


 プラチナブロンドの髪が真っ赤に濡れていき、小さなやせっぽちのリムの一生は、仮のマスターとも呼べない糞男のために自死という形で終わってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ