重吾、刻をこえて5
改稿済
俺は…俺は…ファナを助けたい…ランクル!
ランクルが俺の気持ちを理解したように鉄肉を変化させていき、もとのランドクルーザーの形状に変わっていく。
意識をファナに戻していくと、フーパが地下牢に入り込むところだった。
「ん…」
痩せた頰はさらに痩せがりがりになっていて、檻の中のファナにフーパがナイフを投げた。
「主の命令だ……死ね」
これは…過去なのに、現実だ。
しかも、今…ここで起ころうとしている。
「え…?」
ファナはのろのろと顔を上げた。
金の髪はぼさぼさになり、落ちくぼんだ目が大きく見えてぼんやりとナイフを見つめている。
「お前は凶状持ちのリムだ。主のために死ぬのもお前の勤めだ」
「は…い…」
ギリギリと噛みつくように胃に痛みが走り、ファナに俺は叫び掛けた。
ダメだ!
ダメだ!
「ああ…ここではダメだ…汚れる!外に出ろ!」
「おい、出ろ!」
外はばたばたと男たちが走り回っていた。
使用人は呆然としており、フーパはどうやらここの本来の領主を追い出したか殺したか何らかの手段でこの屋敷を手に入れていたようだ。
慌てているのはフーパの仲間だけのようだった。
ファナはよろよろと引きずられて草むらに落ち、ナイフを手にしながら目を見開いた。
「お祖父様…どうして…」
「早くしろっ」
フーパが叫んでから、口の端で軽く笑った。
「お前は凶状持ちの屑だ、ゴミだ。主として命じる死んで主を救え」
「はい…」
「早く!」
ダメだ!
ファナ、ダメだ!
お前はヒトだ。
ゴミでも屑でもない。
死んじゃダメだ!
ファナはうつろな目で正座をし、ナイフを掴むとゆっくりと首筋に当てて…。
ダメだ!
こんな小さな子が…自死を…。
ダメだーーーーーっ!
ぴっ…と引いた先には白い肌から真っ赤な花のような血が噴き出し、真横に横たわった。
プラチナブロンドの髪が真っ赤に濡れていき、小さなやせっぽちのリムの一生は、仮のマスターとも呼べない糞男のために自死という形で終わってしまった。