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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第三章 重吾、刻をこえて
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重吾、刻をこえて2

改稿済

 『市内高校生少年が、盗難バイクに乗ってジャンクション通過、逆走中』


「ったく、『盗んだバイクに乗り込んで…』って、オザキかよ!乗れ、剛志」


 重吾がランドクルーザーに飛び乗ると、体躯のいい剛志も助手席に乗り込み、ずしりとした重みでしなる。


「全くだな。サイレン鳴らすぞ」


 警察署を出る時に鳴り響くサイレン、右折して白い橋を渡り一気にジャンクションに向かい、休日昼間はまだ車通りの少ない新しい高速道路を疾走した。


 新しいランドクルーザーの足は早く、緑多い高速道路を走り、前方のバイクに…いや、スクーターに、体の小さなまだ子どもから大人になる過渡期の少年が、しがみついている。


「ありゃあ、テンパッとるなあ。メガホン使うか?」


 無線が拡声器になるスイッチを押すと、剛志が叫んだ。


『停まりなさい、そこの原付バイク』


 スクーターがさらにスピードを上げながら、ちらりとランドクルーザーを見る。


 ヘルメットもかぶっていない少年は泣きそうな表情で、運転席の重吾を見つめていた。


 首を何度も横に振るが、すぐに原付にしがみつく。


「いかんがな、剛志。そのまま冷静に近づく。多分…やりたくてやってんじゃねえな。やらされとる気がする」


 暴走する子どもたちを何度も止めたことがあるが、この少年は違っていた…この後の展開も俺は、知っている…これは一度起こったことだ…そして…。


 二車線のまま逆方向に平走する重吾の目にはハンドルアクセルグリップが全開で針金固定され、ブレーキレバーが壊されている姿が映り、もうじきやって来るカーブに振り切れそうな原付バイクにランドクルーザーを近づける。


「君、ブレーキは?アクセル緩まらんのか」


 少年は泣きながら首を横に振り、風圧に飛ばされそうで必死だった。


 車線は封鎖されており、走る車は存在しない。


「ランドクルーザーを真横につけて、カーブ前で君を引っ張る!いいな!剛志、頼む」


 剛志がシートベルトを外した。


「おう!」


 剛志が扉を開けて少年に手を伸ばしかけ、重吾が右に曲がる急カーブのガードにランドクルーザーの右側を擦り続け火花を出しながら、ギリギリ原付バイクに寄せる。


 ランドクルーザーが悲鳴を上げるように、ギャギャギャ…と鈍い金属音を立てていた。


 剛志が少年のズボンの腰を掴み一気に引き寄せた瞬間、原付バイクが路上の異物を踏んで跳ねる。


「お…っ…くそっ…たれ!」


 剛志が素早く扉を開けた空間から飛び出し、反動で気を失いかけている少年を重吾にぶつけ、受け身を取りつつ転がっていくのを確認した時、バウンドした原付バイクがランドクルーザーに体当たりをしてきて、破損して修理中だったガードレールから、ランドクルーザーが飛び出した。


「うわっ…」


 山の斜面が眼下にあり、助手席の扉を開けたままのランドクルーザーが落下していく。


 重吾が被っていたヘルメットを少年の頭に乗せ、宙を舞いそうな少年の頭を抱き抱えたまま伏せた。


 鈍い音がして木を折り曲げ、ランドクルーザーが落下を続け、岩かなにかに乗り上げた強烈な振動に重吾が車内でバウンドし、頭をガラスに打ち付けた。


「うっ…」


 揺さぶりの空間の中で頭を強打した重吾の意識が混濁し、俺の意識も落ちていく。


 山壁にぶち当たりひしゃげるような衝撃を受けないのが不思議だ…俺はそう思った。  

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