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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第二章 リムを狩る者たち
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リムを狩る者たち10

改稿済

 直進すれば白の楽園、左に曲がればガゼルたちが走る奈落峠で、白の幌馬車はかなりの前を走っていた。 


「やっぱ狭い!めっちゃ怖い!」


 奈落峠はランクルの片方の車輪が出てしまいそうな幅で、それが唯一東の地域と繋がる交通路だ。  


 話しを聞いた後、ファナをマクファーレンとラーンスのところに置いていき、幌馬車を追いかけたが、道の細さに馬の方が早い。


 ランクルがハンドルを持つ俺に反するように左側の壁に寄り始め、戻そうとするとく…んと重くなり、四つ輪の縁が壁に当たった。


「壁を走るつもりか、ランクル」


 軽い振動が是と知らせてきて、俺は思い切りよくハンドルを切りながら、左のタイヤを壁に当てて重心を傾けながら加速しようとする。


「うお…っ」


 隣の死体の重吾が横倒しになりそうで、


「ランクル、シードベルト!俺が…いや、俺の死体が転がる!」


 斜めの車体をそのまま走らせつつ俺は死体に手を伸ばし、にゅっと出たシートベルトらしき鉄肉を手繰り寄せ片手で引っ張ると助手席の重吾を固定した。


「あっぶね…」


 固定をして一安心だが、どうにもバランスが悪すぎる。


「手荒く行くか…くそったれ!」


 一気にアクセルを噴かし唸りを上げたランクルが二つ輪を壁につけ、幌馬車と距離を縮める。


 もう少しで追い付くと思った時、幌馬車から先程出会った女が、黒のリムを伴ってゆっくりと出てきた。 


「止まりな、さっき会った凶眼のリム」


 黒のリムが光の矢を背後にまるで背光のように纏い、両手を広げている。


「おっぱいは隠したんだ、お姉さん」


「あたしの胸を見たんだ、命で購いな」


「いやそれほどの大きさでは…」


 距離を開けようとしたが、無理なようだ。


 それが閉じられれば光の矢は一気に降り注ぎ、さすがのランクルでも耐えられないかもしれない。


「凶眼のリム、鉄の四つ輪から降りな」


 盗賊と言った風情の女が剣を抜くと、黒のリムが両手を寄せ始めた。


「いやだね」


 ファナのリムが、また、輝き出した。


 今の俺には少しの飛び道具と、ランクルしかいない。


「ごめん…ファナ…の身体」


 死んでも尚俺に使われ、また、今、ここで死ぬことになるかもしれない。


 現実的な意味で。


 俺はアクセルを全開にして、直角の壁にランクルを寄せ登りながら女を交わす作戦に出たが、真横になって驚く女と黒のリムを尻目にした瞬間、上から降る異常な数の落石に、ランクルが奈落に転がり落ちた。


 幌馬車のずっと上のつづら折りの峠の上には、ミロスの見せてくれたガゼルが落石指揮をしている。


 奈落に突き落とされ体重のあるランクルが一気に落ちていくが、急に扉が開き震えるように俺と俺の死体は空中に振り上げた。


「ランクル!」


 ランクルが扉を閉め暗黒に消えていくまでに時間はかからず、俺は気を死んでる俺を呼ぶ。


 ランクルが自分より落下速度が遅いからと、シートベルトを外したんだ。


 命懸けで守ろうとした命を、消すわけにはいかない。


 ファナの胸のリムが四方に輝き、まるで宇宙にいるようだ。


「ファナ…」


 青黒い団服の手な伸ばすと下から突き上げるような風の中で、目を瞑ってダルそうな表情をしている俺の死体を掴まえた。


「畜生…死ぬのか?」


 その手を必死で掴み取り、全裸の小さな肢体を抱き締めさせる。


「せめて…ファナの身体には傷をつけない!」


と風に逆らい叫ぶと、生きた死体を衝撃吸収のクッションにした。


「え…なんだ?」


 光…それは、確かに、目が眩むほどの光だ。


 それが、俺と俺の死体をやんわりと包んだ。 

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