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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第二十章 クサカノート
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クサカノート2


 旅行記…。

 

日下博士の記した革手帳の黄色い厚紙に書かれた青い万年筆の字は、間違いなく旅行記であり、再び俺は手帳を閉じた。


 いやいやいやいや…ないないないない。


 じいさんのほっこり旅行記を俺にくれて…なにしてんの。


 そればかりがリフレインして、俺はランクルの中で眠るティータの全裸に虫絹を掛けてやる。


 ファナである俺もそうだから、周りから見たらもはや通報物のランクルの中は、プライバシー確保のスモークガラスモードだ。


「ランクル、照明もう少し落としてくれ」


 手元ライトがあると良いのだが、そればかりはなかなか無理だ。

 

 風穴にも懐中ライトな落ちていない。


 まあ、落ちていたとしてもエネルギー源が重吾の血液となるわけだから、貧血増加になるだけだ。


 大切にしよう、自分の血…死体だけど。


 天井のセンターライトが少し照明光を下げる。


『マスター、ランクルがマスターの目を心配している』


 ランクルに接続しているノーパソが小さく声を上げた。


 索敵の為に尻を出している以上眠ることはないノーパソだが、今回はランクルと接続結合しているため、ランクルの意思も理解しているらしい。


「サンキューな、ランクル、ノーパソ」


 その厚紙から先に進めない俺は、窓の外を見つめた。


 まだまだ森の中で今晩は日下博士の小屋があったところにランクルを停めて、日下博士を悼みラビットのパニーニをランクルの中で食べてから眠ることにしたのだ。


 北の端からアギト側を東南に降り、海岸近くの通行証のいる橋を渡り港に行かなければならない。


 その通行証はクリムトに偽造してもらったのだが、実はこちらの文字が読めない俺には何が書いてあるやらだ。


 薄暗がりで、俺は半身起こした状態で日下博士の記した手帳の一ページ目を開くことをためらったが、意を決してめくる。


 しかし次のページでも日下博士はやらかしてくれていた。


 何月何日どこにいっただとか、なにをしたとか…。


 興味が無くなってぺらぺらめくっていた俺は、最後のページを眺めていた。







 私は物理学者であり探求者であり時の旅行者であり、

 リムが生まれてくる時の莫大なエネルギーを利用しつつ、

 繰り返し時を越えて探求していたためか、

 私には時間の巻き戻りが影響されなかったようだ。

 ファナの誕生で未来を垣間見たとき、私は二つに分離した。


 どうか…もう一人の私を…殺してくれないか。

 

 浦島太郎にも浦島太郎なりの矜持はある。

 あれは…許されない。 

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