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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十九章 ミクの消失
207/226

ミクの消失6

改稿済

「マクフォーレンとダクラムが通るのはこの道のはずだな」


「この道。尻の反応近づいてる」


 ランクルの助手席でティータが確認しているノーパソから出ているビーコン反応は確かに近づいていて、ノーパソの地図ではもうじき合流するはずだった。


 グランディア王国、国王ファナの本日の仕事は謁見でも傾聴でもなく、運び屋だ。


 何と言っても国民総労働力、ちなみに国民は国王を合わせて六人なのだから働かないわけにはいかない。


 王国騎士のハイムが国王ファナから賜わった名刀クニミツ(基本は反り刃)を斧の形状に変え切った材木を、ファナは重吾の相棒のランクル(基本はランドクルーザー)をトラック型に変えて乗せ、屋敷に運んでいく。


 現在、グランディア王国では良質な木材を売ることで砂金を得ようとクリムトが考案いて、目下か下働きの国王ファナであった。


「ティータ、ダクラムが見えるか?もうじき来るはずだ。しっかり前を向いてくれ」


 ランクルに乗り込んでいたティータが窓から箱乗りをして、恐る恐ると行った程で背を伸ばす。


「遠くまで見えるわ」


「そうだろ。黒い馬に乗って来ているはずだからな」


 森のルートは敵を迎撃するために、一つに絞ってある。


 南からも北からも、今、俺たちがいる道にしかたどり着かず、そのまま屋敷の前に細く細くなる道で誘導されるように作り変えたのだ。


 まあ、兵法というやつだ。


「あ、ファナ様」


「来たか!」


「いっぱい来てます。え、あ、シャルル様…」


「いっぱい…?」


 確かに近づいているのは、ダクラムと真っ赤な髪のマクファーレン、それから隣にシャルルの白馬もいて、その後ろには幌馬車が数台と連なっている。


「な…んだあ…」


 銀の甲冑のシャルルが手を振っているのを確認して、とりあえず曖昧に手を振る俺は、箱乗りをしているティータを見上げた。





 グランディア王国屋敷の広間はそんなに広くはなく、むしろベランダテラスの方が広いくらいで、どうにも入らない人数のため、バルコニーテラスでファナは、シャルルが連れて来た面々と会うことになった。


「ハイム、マクファーレンの顔色が悪い。客間に二人を案内してくれ。ダクラム、飯は?」


「頼む」


 相変わらずのストイックさだが疲れが見えるダクラムをハイムに任せ、俺は老人たちに頭を下げる。


「お久しぶりです、山本さん」


 クリムトはいきなり人が多くなり 大慌てで、俺はテーブルと椅子を出したテラスの中で、椅子にどかりと座ると、山本、加藤、佐藤、木村の四人の老人…加藤は壮年だが…と向き合った。


「まずは…ファナ君、いや、国王、わしらをここに置いてはくれまいか」


「もちろんだ。まあ、国王って言っても自分はただ、働いているだけだが…。実務のほとんどはクリムトがやってくれてるし」


 とまあ、情けない発言だが本音であり、それに苦笑しほっとしたのか、杖をついていた木村老人が声を上げる。


「国王」


「いや、ファナで…」


「では、ファナ君。なんだね、あの二階の造りは」


「は?」


 今までヨボヨボとしていた木村老人がいきなり杖を俺に突きつけると、首を横にぶんぶんと振った。


「あかんあかんあかん。全然なっとらん。なんだね、この屋敷の組み方は?継ぎ目が雑すぎる。粗すぎるし、これから寒くなるこの地域に隙間風だらけではないか!…仕方あるまい」


 言いたいことだけを言い連ねるだけかと俺は聞き流していたが、木村がしゃっきりと立ち上がりにやりと笑った。


「わしが直してやらんといかんわい。ついでにわしらの家も作らにゃあならんし、様式は平安寝殿造りに近いな。これを活かしつつ…ふむ、そこの毛深い若いの手伝いをしてくれんか!」


 辺境語でまくし立てる加藤に俺は


「日本語、ハイムに通じないって。すみませんが敬称なしで。ハイムー、カトウが手伝いを頼むって」


と、人々に囲まれているクリムトの近くで成り行きを見ていたハイムを呼びつけた。


「加藤さんは設計技師であり大工なんだ。楽園や日下さんの家を作ったのも、彼なんだよ」


と加藤が苦笑いをした。


 多分手伝わされた記憶がそうさせるのだろう。


「え?あ、はい。ってなに言ってんのか分からなくて…王様!」


 お互いに言葉が通じないわけだが、致し方あるまい。


「マスター、わたくしが行くまでカトウさんに屋敷を見せてあげてくださいまし」


 辺境語を理解していないハイムに投げて寄越すしかなかった。

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