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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第二章 リムを狩る者たち
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リムを狩る者たち8

改稿済

 ランクルを噴かし急がせ地図を片手に南の騎士団支部に飛び込むと、俺の目の前にはマクファーレンを抱き抱え血に彩られた背中の傷をタオルで必死に押さえるラーンスがいて、他にも傷だらけの騎士が床に踞り呻いていた。


「絶対に扉を開けるなよ、ランクル」


 俺は俺の死体を置いていくと、


「…血が…血が…止まらないよぉ」


と泣きそうになっているラーンスの顔を見下ろした。


 顔を斬られたのかラーンスの左頬にもいくつか細かい傷があり、俺はまずラーンスの傷を、新しいタオルで冷静にぬぐう。


「…村の医者は?」


「真っ先に斬り殺された。俺たちはここで休憩してから、村を出てすぐに奇襲にあったんだ…っ!騎士団もあとから駆けつけてくれたけど…あいつら…っつ…」


 ラーンスの顔の傷は出血よりは浅く、傷も残らないだろうと思う。


 しかし…マクファーレンは…。


「マクファーレンよりも傷の酷いやつはいるか?」 


 誰もが首を横に振る。


 支部は四部隊十二人で、マクファーレンの次に酷いのは、骨折と言う具合だった。


「よし、大丈夫だ」


 …この感覚…緊急時に沸き上がる高揚感と冷静さ。


 周りは白いポンチョの小さなリムが何をしているんだとばかりに見ているが。


 俺は警察官で救急医療セットをランクルに積んでいる…リムの身体ではあるが、今、何をすべきか、身体が覚えているのだ。


「ランクル、ハッチバックを開けろ。医療セットを出す」


 フードの兎耳を靡かせ俺が走っていくと、ランクルはバカッ…とハッチバックを開け、医療セットを波打つ鉄の肉で押し出してくれた。


「扉は閉めとけよ。あとは…タオルか…」


 動けそうな騎士にタオル…こちらではタオエルと言うんだそうだ…をありったけ持って来させる。


「よし、やるか。ラーンス、手を離せ」


「で…でも…」


 無理矢理ラーンスの手元を離させ、マクファーレンの上着を切り裂いて脱がせた。


 豊かな形のよい胸がこぼれて、ふわりと血の匂いがする。


 血のついた胸回りをなどると、両胸のあるはずの乳首が切り取られており、古いもので俺は目を閉じた。


「背中だけだな、うつ伏せるぞ。テーブルをあけろ」


 テーブルにタオルを敷きマクファーレンをうつ伏せに横たえると、医療セットに入っている消毒液を傷に吹き掛ける。


「うっ……」


 意識が薄れているが傷に染みたのか、マクファーレンがひく…とみじろいだのを見て、俺はマクファーレンの髪を掴み下に避け、マクファーレンの頬を軽く叩いた。


「聞こえるか、マクファーレン。今から傷を縫う。痛いが、傷は早く塞がるから。ラーンス、マクファーレンに布を噛ませろ」


「なにすんだよ…」 


ぐすぐずと泣きかけのラーンスを蹴っ飛ばし、動かしてやる。  


「いいからっ、早く!それから、動くと危ないからマクファーレンの肩を押さえろ」


 俺の剣幕に押されてうつ伏せのマクファーレンの口の中にロール状のタオルを噛ませ、指示通りマクファーレンの両肩を押さえつけ、ラーンスが俺の手元を見て息を呑む。


 俺は医療針に糸を通した状態で、マクファーレンの傷の指一本向こうに針を刺した。


「ぐっ……ぅぅっ……」


 傷を合わせるために糸を通して締め上げ傷を塞いで行き、血を拭きながら縫い終わると、油紙を貼り付けて布を巻く。


 これで終わりだ。


「血が流れ過ぎたな…。マクファーレン、大丈夫か?」


 縫い終わるとファナの方もあらかた傷の洗浄が終わり、骨折しているという隊長の腕を俺が引っ張り骨接ぐと、マクファーレンの口からタオルが外され、


「大丈夫………ラーンス…は?」


としゃがれた声で話す。


「顔の傷は大丈夫だ。マクファーレンの傷は跡残っちまいそうになっちまうが…一体…何があった?」


 マクファーレンがふ……と息を吐いた。


「あたしたちは…本当に…リム狩りのガゼルの本性を…知らなかったんだ……」

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