表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十八章 混乱するオアシス
195/226

混乱するオアシス5

「お前さんたちが辺境人なら、ミクが生き延びたか調べてくれないか?」


「ミク?辺境人ですか?」


 陸が海の横にやってくる。


「ああ、灰色の髪の辺境人だ。十五歳と言っていたな。楽園騎士団のえらく綺麗な小僧と奴隷売買に捕まっていたのを逃がしてやったんだが…」


 ジョバンニの言葉に空が走り寄り、ジョバンニの腰に抱きついた。


「ゴリゴリ、好き…」


「お、わああああ!」


くうやめなさい。すみません、ジョバンニさん」


 ジョバンニが動揺して両手を上げてオタオタしていると、流れの緩やかな海回廊に入ったのか、大海亀の子どものマルクルが顔を出し、くすくすと笑う。


「ジョバンニさん、照れてる〜」


「うるさい、マルクル。前を見ろ」


「はいはーい」


「陸っくん、頭整理ついた?」


 海が陸にそっと声をかけた。


「…はい。どうやらガーランド王国に『ミク』という灰色の髪の十五歳の辺境人がいて、奴隷として西に連れてこられた…ようですね。うかつでした。私たちが潜入していた同時期にいた言うことになります」


「たぶん、私たち下々が入ることが出来ない箇所…王や王子に近いところに監禁されていた雰囲気あるっぽいねえ…。ジョバンニさんが逃がしてくれたみたいだけど〜。灰色の髪なんて…ストレスかなあ。可哀想…」


 可哀想にとはらはら涙する海の横に慌てて空がやってきて、


「海さん泣いたら駄目。海さんが泣くと悲しい」


と海のたわわな胸を抱きしめる。


「うん…うん、ごめんね、くうち」


「うん。キスして、海さん」


「もう…甘えん坊さん」


 海が空の唇にそっと唇をつけ、すぐに離した。


 またまた、この人たちは女の子同士で盛り上がる…。


 それを突っ込まないところが、元自衛官の教えだ。


 海はここでは陸にとっての上官にあたる。


 そう、陸には無くてはならない人だ。


 上官の色恋沙汰だとか、趣味だとか、性癖など一切合切目をつむり職務を全うすることこそ、元自衛官の矜持と理解している。


 で、ここで空がぽそりと言い放つだろう言葉にも、無視をしていくことに陸はしていた。


「海さんのキス、薄い…」


「続きの濃いのは『ミク』くんを見つけてから」


「絶対に見つける。海さんといっぱいキスする」


 見てしまったジョバンニは毛のない部分を真っ赤にしており、花売りの女将は口笛を吹いて囃す。


「ったく…、二人とも目立たないでください」


 空の頑張りに期待するとして、現在作戦指揮官である陸は頭を悩ませる。


 港オアシスで情報収集をしつつ、モスを追えるのか?


 ここは『ミク』を追う方が得策ではなかろうかとも考えた。


「陸っくん、『ミク』くんの生死を探ろ。モスはあとでいいよ」


「しかし…」


「日下博士には悪いけど、生きてる人間が先だよ。わかるよね、陸っくん」


 陸は頷き岸に近づくにつれて、人が溢れかえる港を眺める。


「さあ、稼ぐよ。あんたたちはどうする?」


 花売りの女たちの長である女が、デルタフォースに声を掛け来た。


「女将さん…」


「あたしたちは港オアシスに宿がある。そこで客を引いてしばらく働く。あんたたちは、港までの契約だからね。行くあてがないなら、うちの宿にいるといい」


 好意に甘えて、糸口を掴むしかない。


 陸は頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ