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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十八章 混乱するオアシス
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混乱するオアシス4

 泣きそうな…いや、泣いていたレイモンドを思い出し、幌馬車の中で膝を寄せる。


 幌馬車を上目遣いに見送るレイモンドと、その横で何やら話しているフラウアが、徐々に遠くなり小さくなるのを見ていて、ミクは胸が締め付けられた。


「レイ…」

 

 胸が痛い。


「陛下…シャア陛下、助けて」


 一人心地小さく呟いた。


 レイモンドに会わなければ…レイモンドを知らなければよかったのに…。


 ダイナナからヴェスパまでは、小一時間の直線距離だ。


 ミクは眠ったままのラーンスを見つめながら、膝を抱えていると、


「楽士様、見えてきたよ。ドラグーンのオアシス、ヴェスパ」


と、ピコが明るい声で叫んだ。




「あっつ〜い。何なのよもう〜」


 たわわな胸をゆさゆさと揺さぶり、モフル族の船頭ジョバンニが鼻の下を伸ばしているのをチラ見して、デルタフォースのうみが、ボタンを二個ほど開ける。


「はあい、毛深いお方」


 ジョバンニが顔の毛のない部分を真っ赤にして、ふい…と横を向いた。


「なんだ、花売りなら、俺は…」


「う〜ん、ちょっと違う。私たちは花売りさんたちの護衛。用心棒さんなの〜」


「そ、そうか」


 東の港で無頼の男たちに絡まれている花売り女…つまり娼婦を助けたデルタフォースは、そのまま西のオアシスで臨時の店を開くという女将の一向に加わって用心棒となった。


 ゆっくりと移動するモスは海上には出ていないが、時間の問題だ。


 行先を確かめて、上官に報告しなくては。


「海さん、カマをかけて見ませんか?もしかすると、手掛かりが」


 ひそ…とりくが海に耳打ちをする。


「おう、陸っくん、ないす。ジューゴさんの探し人」


 空にも言われたが、忘れていた海ではない…訳でもない。


 だって、あの人イマイチ、好みじゃないし…私の好みは駄目な人なのよね〜。


 彼は駄目そうに緩そうに見えて、根本違う感じ。


 きっとそこそこにいい育ちなんでしょ〜みたいな?


 ジューゴに対する、海なりの評価を展開しつつ思考を閉じる。


 海はちらちらと胸元に目をやっては、顔を真っ赤にしているジョバンニに近付いて、ジョバンニの脇から胸を押し当てるように寄った。


「まあ、毛皮ふかふかなのね。意外だわ〜。話しには聞いていたけれど〜モフル族の人は…初めて見た」


 照れていたジョバンニの顔が精悍になり、声が低くなる。


「髪色が違うが……辺境人か?」


 亀の船には花売りの十人の女たち以外に、行商人と語り師たちが乗っていて、ジョバンニのそれはそこいらに気を使ったもののようだ。


「染めているの。綺麗でしょ」


 海はこのモフル族のゴリラは信用できると踏んで、陸と空に目配せをする。


「…俺はモフル族のジョバンニだ。辺境人のクサカには世話になった。この船スタイルを考えてくれたのもクサカなのだ」


 以前は亀の甲羅に直接乗っていたと聞いて、海はゾッとする。

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