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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十八章 混乱するオアシス
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混乱するオアシス2

 真っ青な湖に、真っ白な白鳥…ハクチョウに見える大きな鳥は、レイモンドとミクを見て空に舞い上がってしまう。


「あっ…」


 ミクは見慣れない自分がきたからかとレイモンドを見るが、レイモンドは真っ赤な光彩を歪めて苦笑いをした。


「ミクのせいじゃない。僕が聖獣だから」


 ミクよりも少し背が高いだけの痩せた、白いふわふわの髪と赤い瞳が幼く見せるレイモンドの悲しみが伝わってくる。


 巨大な聖獣であるレイモンドへの、野生の恐怖。


 ああ…なるほど彼も寂しいのだ。


 ミクは不意にバイオリンを構えた。


 ハクチョウとレイモンドを繋げてあげたい…いや、レイモンド…彼が求める何かを繋げたいと感じ、曲は…白鳥の湖…あの有名なフレーズが浮かんだ。


 そんな曲で舞い上がった白鳥が戻ってくるとは考えにくかったが、弾いていると


「あっ…」


と、レイモンドが小さく呟き視線だけ送ると、白鳥が湖に降り立ち、レイモンドが用意した餌鉢からついばみ始める。


「こんな近くで…」


「手から食べるかもしれないよ」


 弾きながらミクが言うと、レイモンドが生真面目に餌を手にして白鳥に差し出す。


 白鳥は少し戸惑いながらも、レイモンドの手からパンのかけらをついばんだ。


「…っ」


 声にならない感嘆のような呟きがレイモンドから漏れ、白鳥が食べ終わり静かに水面へ戻り浮かぶ姿を眺めながらバイオリンを弾いていたミクは、レイモンドの瞳が濡れているのに気づきつつも、静かに音を変えていく。


 染み渡るようなバイオリンは、湖を包み余韻を持って消えた。


「ミクは…辺境人なんだろ?どうして砂漠にいるんだ?」


 涙したのを隠すように横を向いたレイモンドの横にミクは座ると、バイオリンケースに素晴らしい音色を奏でたバイオリンをそっとしまう。


「奴隷としてガーランド王国から」


「奴隷!まだそんなことが…ミクは刻印を…?」


「あ、ないない!」


 ミクは慌てて首を横に振るが


「え、足の裏にも?見せて!」


と、足を掴まれ、挙げ句の果てには、全身丸剥きにされ、ミクは慌てるしか無い。


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