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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十八章 混乱するオアシス
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混乱するオアシス1

 モフルーの馬車に乗り、隣のオアシスに向かう。


 巨大な豊かなオアシスのダイナナに別れをつげ、ミクたちが本来訪れるはずのヴェスパへ行くのだ。


「楽士様、大丈夫?」


 まるで巨大なハムスターのピコの言葉に、グレイメッシュの頭をあげる。


「え?僕は平気だよ。ラーンスのほうが…」


 空になった荷馬車に横たわるラーンスの横に、ミクはバイオリンケースを抱えて座っていた。


「うん、騎士様ずうっと起きないもんねえ。騎士様も心配だよ」


 ピコが長い髭を風にそよがせ、手綱を少しだけ左に寄せる。


「ニーモ、砂の穴があるよ」


 どうやら何があるようだが、ミクには何もわからない。


「おうよ。しかし、騎士様顔色が悪いし、呼吸も浅い。心配だ」


 ニーモが幌馬車を引きながら、ちらりと幌を見遣る。


 あの怪物みたいな砂漠ムカデを倒した後、昏倒するように眠りそのままだ。


 ミクがレイモンドに連れられ、湖で白鳥を見ている間も眠っていた。


「騎士様、凄かったねえ。まるでリムみたいにぴかっ…て!」


 ピコが浮き浮きと浮かれて話すと、ニーモが低くいななく。


「まるで二十日はつかばなのような美しくたおやかな雰囲気があるのに、リムの力を併せ持つなんて、最強の騎士だな」


 ミクはラーンスを見下ろす。


 確かに綺麗だ。


 卵形の綺麗な整った顔立ちに、大きな青い瞳、真っ白な肌に薄桃の頬。


 すっきりとした鼻梁に薄くチャームとしてそばかすが浮いているが、それが綺麗過ぎる顔立ちを柔和にしていた。


「リムっ…て?」


 ミクが聞くとピコが困った顔をして髭をひくつかせたのを感じたのか、ニーモが 、


「リムは『リーリウム』の略だと、クサカは話していた。クサカが二十日花を見ていて辺境の花になぞらえて付けたのだ。クサカは辺境人のガクシャだから、俺たちに分からないことをたくさん知っていた。今の妖精王の生みの親であり、知恵者である偉大な人であるよ」


とミクに話してくれた。


「ニーモ、ニーモ、クサカ、今年の春は来なかったねえ。いつもは冬前に来て、春までモフルーの森に来ていたのにねえ。マゴムスメはかわいいし」


「ああ、マゴムスメは可愛い」


「ねー!」


 ロバとハムスターが共通な話題でトークをしている中で、どうにもミクは取り残されていたから、まだまだ話しているピコとニーモをそのままに、ミクは思いを馳せた。

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