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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
閑話 グーグーだってガラケーである
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閑話 グーグーだってガラケーである

  日頃、ファナのうさぎさんフードの中で寝ているか、半目で肩に乗っているグーグーは、シリ達とは仲が良くない。


 ノーパソとは同期をしているが、尻達が集まりころころしている時も、ファナといることが多く尻達に近寄りもしないのだ。


「マスター、尻が足りない」


 ティータが裸のまま転がり、寝台でノーパソを開いて呟いた。


「ティータ、寝パソ禁止」


ジューゴは横で背中に張り付いて寝ているファナを起こさないように頬杖をついて、ティータの広いおでこを軽くデコピンする。


「マスター、いたい」


「目が悪くなる」


「悪くない」


「これから悪くなるの」


「むう…」


 もう朝になっているが、たまにはだらだらしても良かろう。


 昨日の夕方のファナは頑張り屋さんだったのだ。


 ジューゴの腰あたりにしがみついているファナが、リムの力を最大限に発揮して、屋敷の上にログハウスを上げただけではなく、木の結合まで果たし階段を組み上げるよう木に働き掛けたのだ。


 隙間風があるのが残念なのだが、とりあえずは一部二階屋敷となって、ファナは夜ご飯の時から寝始め、お風呂も入らずに眠っている有様だ。


 ジューゴは裸の腰にファナの髪があたりくすぐったくて、ファナを横に引き上げると、ファナの長い髪を踏まないように整えて、二人の間に座り込む。


 全裸二十五歳男子と、全裸十一歳と九歳女児の寝台は、いつも清らかだ。


 もはや、誰も変な興味本位の目で見ることはない。


 下半身か沈黙・撃沈・聖人君子なのだから。


 広い寝台には、ファナの頭の上にグーグーが羽を閉じて眠り、ティータの枕元のサイドテーブルのバスケットに、数匹の尻が丸くなって眠っていた。


「一号はシャルル様に、二号は森にいて、三号はガーランド王国に行かせた。四号はええと…」


「デルタフォースに渡しただろうが」


「そう。だから、足りない」


「ノーパソは何匹と同期出来るんだ?」


 ノーパソは自己意思を持つ生体コンピュータになっており、ティータと電脳アクセスしたことでより能力が向上したらしく、画面には誰も触れてはいないのに文字が現れた。


 残念なのだがジューゴにはそれが全く読めない。


 読むことを放棄してしまって以来、仲間内に読んでもらっているわけだ。


「無制限」


「九引く四はいくつだ、ティータ」


 ティータが座り込み両手の指を使って、減算をして指を折り減らす。


「マスター、これだけです」


 五個もいるのなら、別にいいだろ…と思うものの、ジューゴは真面目な顔をしているティータの頭を撫でた。


「ファナが起きたら、風穴に行くか。新しいのがいるかもな」


「ん!マスター、好き」


 ぐりぐりと頭を擦り付けて来るティータの可愛らしい仕草に、ジューゴはハイムに悪いと思いつつ甘んじて受けていた。




 風穴は今日もどんよりとして、冷たい風が上から湖に拭き降りてくる。


「痛くしないでくれよ…頼む」


 刃を持ったトンファを左手首に当てると、ジューゴは痛みに情けなくも呻き、パタタ…と血が落ちた。


「さあ…出てきてくれよ、尻(siri)」


 血の流れ出る腕をぶるんと振るうと風に乗って血が舞い散る。


「ティータ、反応は?」


「ない」


「ぅんじゃ、移動するか…ファナ?」


 低い呻き声のような音がして、少し離れたところで座り込んでいたファナが、小さな悲鳴を上げた。


「きゃあああ…」


 赤い生きた鉄のぶよぶよした塊が、ファナの目の前に覆いかぶさろうとし、ジューゴは出遅れてしまう。


 何度も来ているのに、こんなことは始めてだ。


「やぁ…ジューゴさ…」


 ぶよぶよの生きた鉄がファナを包み込もうとした瞬間、ファナの肩にいたグーグーがファナの頭にぽんと上がり、目が眉月のように細くなると、口がぱかりと開き、強烈な光を放ったのだ。


「はああっ…は…波動砲…か?」


 生きた鉄のぶよぶよは木っ端微塵に散らばり、小さくなったままぶよぶよと動き始め、ちょうどいい大きさになったらしく、ガンクルがジューゴの腰から飛び降りると、銃口から生きた鉄を吸い込む。


ジューゴが驚いたばかりではなく、ファナもティータも驚いて固まっていた。


「あーー…グーグーはガラパコス携帯かあ…」


 多機能型の携帯であったグーグーは、我関せずと居眠りを決め込んでしまったようだ。


 ファナの危機を救ったグーグーの奥深い機能にジューゴが驚いていると、ざあああ…と白い風が吹く。


「なんだあ…って、モス!」


 巨大な白い蛾となったモスが風穴を旋回し、東へと風に流されて飛んで行くのだ。


「モス…ジューゴ様、おじいさまが…」


 腰が抜けたままのファナが、ジューゴを見上げた。

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