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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第二章 リムを狩る者たち
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リムを狩る者たち7

改稿済

「お前を捕まえさせてもらうよ!」


 女が伸び上がるように走り込んでファナの髪を掴み引き摺るように床に這いつくばらせ、そして抱き抱えようとする。


「ぐっ…!」


 俺は立ち上がろうとするが、黒のリムから放たれた光の礫が全身を苛み、もんどりを打って無様に出遅れた。


「凶眼は貰ってい……ぐっっぅ!」


 トロッコ模型に夢中だったお館様の腕がぐんっ…と伸びて、女の鼻に拳が当たる。


「友達をいじめるなぁぁ!」


 そのままぶっ飛んで壁に背中を直撃した女はそれでも気絶はせず、黒のリムが素早く駆け寄る中、転がった壁に引っかけて片方の胸当てが外れて白い丸みが溢れたがそのままに、黒のリムの肩を借りつつ立ち上がった。


「どうして、フ…フレアを殺したっ!」


「こちらに来ないからさ!せっかくお前よりよい主を与えてやろうというのに、だから殺した!あっははは!」


 お館様の怒りは収まらず、更に鼻を潰した女を殴ろうと唸りを上げながら近寄ると、


「く…そ!このデカブツがあっ!」


女がレイピアをお館様のわき腹に突き刺そうとし、俺は小さな身体でお館様に体当たりをする。


 ぎりぎりレイピアから逃れ俺とお館様は共に、反対側の壁にドッ…と転がりついた。


 痛い…と思ったが、なんとお館様が壁とのクッションになってくれ、俺は全身を打たずに済んで…。


「まあいい、ガゼル様が二匹のリムを狩った。あたしはおまけだ。次は、凶眼も狩るさ。行くぞ、シャール」


と、女が言い捨て、黒のリムと裏口から走り込んで逃げていく。


 駆けて行くリムの顔には黒いあざのような濁りが見え、俺はへたへたと腰を抜かして座り込んだ。


「助かっ……た」


 正直…。


 女か男かどうかも不明だったのだが、『老人』の動きにしては滑らかで、しかも内股に入り気味な歩き方に老人さを感じられないでいて、しかも、お館様の利かん気と腕っ節のよさをあてにしての作戦だったのだ。


「お館様、大丈夫か?」


「あ、ああ…トロッコが…」


 お館様は何事もなかったかのように、散らばってしまったトロッコ模型を集め組み立て始め、俺は気になっていた本当の老人の行方を勝手に探し始めると、裏口の木戸の裏で立ち尽くす。


 臭うのは…他の地面とは違う形状に盛り上がった場所だった。


 俺は思わず両の掌を合わせて目をつむり合掌した。


 使用人を集め事の次第を話すと、使用人たちは驚き泣き濡れたが、俺は先を行く身だ。


「なあ、掘り返すのはやめてくれ。このまま安らかに眠らせてやった方がいい。お館様を支えてやってくれよ」


 死体の重吾を助手席に乗せると、ランクルを走らせた。


 楽園騎士団本部でカミュ副隊長から見せてもらった手配書にあった名前は、ガゼル。


 そのガゼルの名前がリム狩りらしい女の口から出た。


 しかも二人のリムを確保した…となると出会ったばかりだがマクファーレンたちが狙われたのかもしれない。




 杞憂は……現実となった。




 楽園騎士団南支部では背中をざっくりと斬られたマクファーレンが、ベッドに横たわり浅い息を吐いていた。

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