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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十七章 子供の凱歌
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子供の凱歌3

 しかしてセントラルに滞在する必要があるのか…。


「どちらにしても、辺境のグランツやクリムトの生き残りが向かった北はそのままにしておかなくてはならない理由はなんだ?」


「さあ…ただジュリアス王国には手を出すなと、ループス様のお考えに、国王陛下もご賛同になり。あ、このことはクルイーロ様もご存知でございます」


「クルイーロも…?」


 クルイークがツン…と突き出た張りのある唇を噛んでいると、若いのか壮年なのか不明な容貌のザキが、


「派手な乱痴気と、閣下がセントラルに滞在していただいている理由は…もう来ますよ」


と、身を奥にひそめる。


「っ…」


 二階の客間にベランダから滑り込んだ数人が、無言でクルイークを取り囲んだ。


 汚れてはいたが楽園騎士団の青い制服生き残りだと分かる。


「じゅ…十人ですか…。ループス様の予測通りではありますが…わ…私は事務官でありまして、剣はからっきしで…」


「我がリムよ。事務官をガードして隅へ」


 戦いの展開上、クルイークの少しだけ後方で闇防御壁張ろうとしていたミロスに小さく告げた。


「しかし…僕の力では一人しか…」


 リムが小さな声で告げるのを無視し、背中をどん…と押してザキの方に追いやる。


「僕に構うな。行け!」


 囲む輪はリムには寛容なのか、輪から飛び出したミロスはザキのところに行き、ランプの光を経由した屈折で見えなくなる。


「無言か…仕方あるまいな」


剣を抜くとパリリ…と発光した光が溢れスパークしつつ、小さな光の球体が飛び散った。


「ループスの予測は…残党狩りか!」


 怒りに任せ剣を横に凪ぐと、何人かがその電撃に当たり倒れるが、残りの幾人かが一斉にクルイークに襲いかかる。


「遅い!」


 剣を介して電雷が伝わり、バチバチッと激しい音がして、騎士の一人が悲鳴を上げながら床に倒れ痙攣し始めた。


 見れば片腕のない哀れな男で、遊撃隊の仕事ぶりに嫌気もさす。


「来ないのか?」


 痙攣した男の動きは止まり死んだようで、クルイークは剣を真ん中で構え、最初の一撃で心臓を止めたであろう騎士たちの死体を避けながら、残りの三人を見据えた。


「だから、時期尚早と話したのだ」


 声は仕方なしと言った風にため息混じりであり、クルイークは端正な眉尻を上げる。


「どこから沸いて出た…」


 同じく騎士団の制服の大柄な男は、後ろの赤毛の女に肩を貸しながら黒い剣を手にして、やはりベランダからクルイークの前に現れた。


「二階のここは騎士団長の私室で、リム用の部屋があるのだ。外に繋がる道は訪れたことのある隊長しかしらない」


 今は完全に塗り込まれてしまっている壁を確認するようにコンコンとノックした男は、赤毛の女を壁に持たせかけると、黒い剣を構えた。

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