リムを狩る者たち6
改稿済
これは…やや…ヤバい展開かもしれないと、俺が考えを更に深く掘り下げようとした時だ。
「お食事のお時間です」
逃げる算段を決め込んでいた俺は出鼻をくじかれた。
「あ…ありがとう」
「主様をお運びします」
髪の毛を濡れタオルでしっかり拭いてブラッシングをすると、ラビットお手製兎耳のついたフードコートポンチョを頭からかぶり、俺はふん…と気分よく鼻をならす。
つやつやの髪の毛は顎ラインで綺麗にまとまる横髪と、背中まで長い金髪とに別れ、それぞれがうねりなく美しくまとまっていた。
「可愛いな…ファナ」
中身が二十五歳のお兄さんなのがお気の毒なくらいだ。
重吾を二人がかりで運ばれ、使用人が案内をする食堂に出向いたが、お館様は木で組み上げたトロッコ模型をいじっており、俺は
「へえ…木製か」
と囁いた。
「て…手作り…」
俺がお館様の横にいくと、
「トロッコ列車か…連結は?お、動くじゃないか」
「い…岩盤からし…下、降りるとき、五個の動きを…する」
とうれしそうにお館様は小さなトロッコ模型について話してくれた。
「ようございますな、お館様」
老人が食事を持ってくる。
「お召し上がりを…たいしたものはありませんが」
と話すそれはパンとスープ…だが…リムのファナの鼻腔には嫌な匂いに感じる。
これが異物を厭うリムの本能か…スープの毒性を感じるんだ。
すげえ…超人かよ…。
「でも、そろそろ、俺らは行くわ」
と、立ち上がった。
「お礼の食事を…」
「だって、それ毒入ってるだろう?そんなのは食えないな」
「お、お待ちください」
老人は慌てて扉の前に立ち、俺は少し距離を図り仕方なく煽ることにした。
「いつまで頑張る気かなあ…あんな、若いよね?動きが老人じゃないもんな」
老人の杖が震える。
「その杖はアイスピックかなにか仕込んでいるだろう。お館様のリムの首の後ろに小さな傷があった。つまりは…」
老人が杖の柄を掴むと、光る細い刃を抜き放ち俺に向かってきた。
「うわわわ、まさかのっ…」
切っ先をかわし俺はテーブルを飛び越えて、スープが入る皿を老人に投げる。
「ぎゃっ…貴様!」
中のスープが老人にかかり、老人だった姿が女の形に歪み女の手には杖ではなく、細身の剣が握られていた。
乳房を覆う布は小さく、腰垂れが優美に動く軽装は、まさに自分の腕がよいと自負する証だ。
「あたしのレイピアを避けるなんてね。シャール、幻影はもういい。あたしの援護を」
扉の向こうから黒のフードローブを羽織るリムが現れ、腕を伸ばし何やら呟くと、俺は急に目が眩んで机を盾にする。
「黒のリムは光と闇を操るね…なるほど…」