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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十六章 砂漠の楽士
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砂漠の楽士9

「第三者が立ち入っているようだ」


 シャアも思い立つが、そもそも西の乾いた大地に介入して何になると言うのだろうか。


 ドラクーンもウォールフもモフルーの森のさらに奥のヴァンピールですら、只人(ただびと)より遥かに強く、そもそも種が違うのだ。


 勿論、交流もあるし少なからず種の交わりもある。


 それで完全体が減少していると長老たちは話していたが、母が繰り返し呟いていた


『種としての限界』


がぴったりしているような気がしていた。


 そんな滅びに向かう種に、何をしようというのか。


「私もそう思います。だが、乾いた大地に何のための介入か…」


「気にかけて置くようにしようかの」 


「ところで、ご子息殿下は?成人されたのでは?」


 テールズが立ち上がり苦虫を噛み殺した表情をし、そのあと見守るリーフに礼を取ると、シャアに手を出した。


「見合いの姿絵を次々に見せたら、家出をしおってのう」


 ここでもか…と、シャアは苦笑いをする。


 レイモンドはつい先頃成人したばかりなのに、もう番うように求められていた。


 ウォールフの聖なる獣…完全体である所以だ。


「そなたも同じか」


と、テールズに言われると、


「いえ、私は…まだ弟のイーズもおりますし。陛下、レイモンド殿下はまだ若い。それに陛下にはまだご子息がいらっしゃるはず」


シャアは濁した。


「あれは、国を離れた。あれには…もはやあれの生き方しか出来はしまい…」


 苦渋のままゆっくりと歩みを進める老体に付き添い、シャアはウォールフの悲劇の一端を思い出す。


 母から聞いたことだが、弟たちが生まれるときは最新の注意を払ったものだ。 


「大丈夫だ。我々には白き疾風がいる。蒼き伝説などもはや必要がないのだ」


 年老いたテールズの言葉が…重かった。




 

 白狼が降り立った花が咲き誇る丘には、一人の女の子がいて、ミクは少し身体を固くする。


 なぜならば、高校でミクをいじめてきた中心の女生徒によく似ていたからだ。


 髪の色は違うのだが雰囲気がよく似ていて、


「レイモンド!もう、レイ!何を勝手にしているの!」


と甲高く叫んでいた。


「ミク、大丈夫?乳兄弟のフラウワ。少しうるさいんだ」


 ミクとラーンスを降ろすために身を伏した白狼が、


「レイモンドだよ、ミク」


「僕の名前…」


「そばかすの金髪が呼んでいただろ?ウォールフは耳がいいんだ」


とミクたちが降りると、身体をぶるりと震わせた。


 霧がかるような光が包み、真っ白な肌に、真っ白のモヘアみたいなふわふわの髪…青銀の瞳がよく似合っていて、びっくりするほど赤い唇が印象的だ。


 ラーンスも男の子にしては綺麗だなと思っていたから、それとは違うのだがまた綺麗な人がいてミクは驚く。

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