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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十六章 砂漠の楽士
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砂漠の楽士6

 ニーモがムカデを避けながら走り、左に迂回して元のルートへ戻る時に、ミクがちらりとラーンスを見ると腹を刺したもののラーンスが撥ね飛ばされ、砂に転がっていた。


「ラーンス!」


 弦に指を這わせながら叫ぶ。


 力を…ラーンスに力を!


 ラーンスが逃げ切れず思わずといったように、左手を伸ばしている。


「危なっ…え…」


 ラーンスの掌に光が集まりだし、一気にムカデの顔目掛けて光弾が打ち出された。


 ムカデがもんどり転がりのたうち回るが、まだ動きが止まったわけではない。


「ニーモ、ラーンスを拾お!」


 ニモがラーンスを横目で見ながら、ニーモに叫ぶ。


 ラーンスは暴れるムカデの手に当たり肩から血を流していて、ミクは必死で踏ん張り曲を弾いた。


「当たり前だ!ピコ掴まれ」


「うん」


 ニーモの動きも俊敏になり、モフルーにもミクのバイオリンは作用しているのか、先程までより早い動きでラーンスに近寄ると、


「ラーンス!掴まって!」


と、馬鞭を差し出しラーンスが傷ついた腕で掴んだのを見るや、ピコが短く見える小さな手で一本釣りしたのだ。


「いかん、来るぞ!」


 御者席で剣を閉まったラーンスが歯を食い縛り、両手を伸ばして広げそのままパン…と叩き、光を集める。


「光捕縛」


 太陽に煌めくロープのような光がムカデに絡み付き、ムカデを締め上げた。


「そのままムカデを伏せつけろ」


 ニーモがその隙に安全なルートへ戻り始め、ミクがほっ…とバイオリンの弦から手を放した時だ。


「うそ…だろ?力が…」


 音が鳴り終わるやいなや光のロープが消え、ラーンスが声を上げる。


 拘束を解かれた砂漠ムカデが、砂を這うようにうねりながらニーモの後を追いかけてきた。


「ニーモ!早く早く!ルートへ!」


 安全ルートにはムカデ避けの堅い岩盤になっていて、ムカデが襲ってこない。


「荷物を捨てるか!」


「捨てないで!大切な預かりものなの!」


「しかしっ…」


 ムカデが低い態勢から身体を上げ、砂橇に襲いかかろうとする瞬間、ラーンスがミクの身体に覆い被さるが、ミクは隙間から白い影を見た。


「ガアアアアア…」


 真っ赤な砂漠ムカデを襲う白い…巨大な…。


「お…狼…」


 鋭い牙で砂漠ムカデを二つに咬み切ると吐き出して、


「不味い…」


と純白の狼が唸る。


「あ、レイモンド殿下!」


 ピコがひょこんと立ち上がり頭を下げるが、白い巨大な狼は荷台に目をやって来た。


 綺麗な青い瞳を細めると、


「ブルーラグーンの人だね。二人は僕の背に乗るといい。少しでも軽くしよう。ニーモ、大丈夫か?」 


 ニーモがため息のように嘶き、


「正直…助かります、殿下。ダイナナへ向かっています」


と苦笑いする。


「そのようだ。二人とも僕の背に乗れるかい?」


 純白の狼が砂地に伏せて、首を伸ばす。

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