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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十六章 砂漠の楽士
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砂漠の楽士3

 想いを馳せていると、


「楽士様~ブルーラグーンで人気のあれ、聞きたいなあ~」


とピコが手綱を持ちながら後ろを振り向いた。


「え?」


 ピコがミクの手元をちらちらと見ては、


「それ、それ…音の出る…」


「バイオリン?」


「そう、バイオリン!ふんふんふーんってやつ」


 砂橇とはいえ移動している中で弾く…?


 サンドを食べながらミクは戸惑ったが、ラーンスが朝御飯のサンドを食べ終わり、


「いーね。俺も聞きたい」


と無責任にも笑う。


「うまく弾けないよ…」


「縁に座って弾けばいいよ。落っこちないように見ててやるって」


 ラーンスが立ち上がり場所を開けて荷物をずらすと、ミクが砂橇の縁に座る場所を作ってくれ、ミクはサンドの残りをラーンスに渡した。


「とりあえず…頑張ってみる」


「そうしろよ、な」


 ラーンスが意味深にピコに頷くのがわからなかったが、ミクはバイオリンをそっとケースから出す。


「ちょっと弾かせてね」


 ミクのバイオリンはまるで意思を持つように、心柱が鳴るのだ。


 ミクは股を開いてポジションを作ると、顎にバイオリンをあてがい弓を引いた。


 きらきら星…本来はハ長調k265…モーツアルトが、フランス民謡を編曲したものであり、ミクたち辺境人は、子ども唱歌『きらきら星』として普通に口ずさむ。


「すげえ…」


 ラーンスがバイオリンの指さばきに驚き、ピコは合わせて


「ふんふんふーん」


と嬉しそうに鼻唄を唄っていたから、ミクは少しだけ付け加えた。


「辺境には合わせた歌があるんだ」


「楽士様、歌ですか?」


「うん、歌は下手だけど…」


 ミクは弾きながら、


「きらきらひかる おそらのほしよ


またたきしては みんなをみてる


きらきらひかる おそらのほしよ」


と、辺境の言葉で唄う。


 いつか…辺境人で働いているジューゴに届くと良いなと想いながら…。


「キラキラヒカルー…胸がほっこりする。ニーモ、僕たちのタマゴ、この唄好きみたいー」


 ピコが胸元を押さえて身体を揺らしながら言うと、


「俺も好きだな。楽士様、なんという音の集まりだ?」


とニーモが前を向きながら歩き続けて話してきた。


「あ、『きらきら星』です」


 ミクが言うと、ニーモがもがもがと笑うような声で告げる。


「ピコ、生まれる子の名は『キラキラ』にしよう」


「あ、いーねー」


 ピコがふわふわ胸の触って髭を揺らした。

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