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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十五章 砂漠の陰謀
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砂漠の陰謀9

 多分…何らかのいざこざになる。


「陛下、僕、ヴェスパに行ってみたいです」


「あ、ああ…よかろう。護衛にラーンスを付けよう。…他には?」


 ラーンスは不満を叫んだようだが、ミクは聞かないようにして


「あの、陛下、飾り帯をはずしてもいいですか?」


と聞いた。


 バイオリンを奏でるには少しだけひきつれるのだ。


「うん?ブルーラグーンの自由民(ナーザール)の証がないと…」


「袖や裾に縫いとりではだめですか?あとトーガも長すぎて…」


「辺境の楽器を鳴らすには難しいのか…分かった。衣装を何とかしよう。他には?」


 他には…と言われても…何もない。


「陛下?」


「いや、何でもない。誰か、衣装仕立て屋を手配しろ」


 シャアに対してまだ何が言い足りなかったのかミクには分からず、


「ミーク、鈍感」


とラーンスに言われても、


「え?なにが」


やっぱりなにがなにやら分からなかった。




 この砂漠で毎日朝晩湯にはいるとか、尋常じゃないぜ…。


 ラーンスは湯張りの湯槽からざばりと出ると、待ち構えている女使用人からタオエルを受け取る。


 元々リムだったラーンスは温かい湯が苦手で、川の水浴びがちょうどいいのだが、文句を言える立場ではない。


 辺境人のミクは湯が大好きなようで、サボンも使うようだが、泡立つサボンだけは遠慮していた。


「あのさあ、俺、一人で出来るんだけど…」


 膝までに切ってもらったトーガを持って待つ女使用人は、


「お仕事でございますよ」


とラーンスの金髪をタオエルで拭いてくる。


 成人していてもラーンスもミク同様背が小さめで、どうにもドラクーン族は女も男も背が高いから、すっかり子ども扱いだ。


「私は王族の方々の身の回りを甲斐甲斐しく世話をして、砂金を得ますし、ラーンス様はイーズ殿下のお話相手兼最もお近い近衛騎士として、自由と砂金を得ます。お互いにお仕事でございますよ」


「じゃあ、俺は朝から晩まで、時には深夜まで仕事してるってことになるよな…」


 ドラクーン王子の相手は骨が折れる。


 一日中どっかかしら身体中が痛いのだ。  


「そうですわね」


「まあ、リム時代より気楽だけどさ…」


 髪を整えられ、身支度をさせられる。


「殿下は幼少の頃からご気性が荒くいらしてますから、ガス抜きにラーンス様は丁度宜しかろうかと思います」


 あーそーですかい…俺はその程度だよ。


「申し上げますが、殿下は信用の置けない方を寝所に招いたりはいたしません。未だにあなた様一人ですから」


 古参の女使用人がぴしりと言い、ラーンスは眉を潜めた。


「う…分かったよ」


 もはや言い返せない。


 ラーンスは隣の部屋で待つイーズのところに向かった。


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