砂漠の陰謀4
手から光の楯なんて…ミクは声もなく驚いた。
「すごい…ラーンス、すごいね。それってまるで超能力みたいだ」
「チョウノウリョク?なんだそれ」
片言の言い回しにミクは、
「ええと…人の心を読んだり、スプーン曲げたりするやつ」
と説明する。
それだけではないような気がしたが、ミクはそんなにテレビを見てはいなく、どうにもうまく伝えられなかった。
「スプーン曲げてなんの得があるんだよ。使いにくいじゃないか。ったく、すごいのは、お前だろ。もうリムの力がないくせに頼ろうとする俺自身に苛ついてたのに、お前の音を聞いてたらなんかさ…」
ふう…とため息をついてラーンスが
「なんかもういいかなあ…って思っちゃったんだよ。癖になってんのは、しょうがないってさ…」
と笑う。
「変な力が抜けて。さすがに、陛下の楽士だなあっ…て」
ミクは目を見開いた。
「え…なに?」
陛下の…楽士?
「あれ、知らないの?みんな言ってるぜ」
そんなことは聞いたことはない。
第一、シャアからもそんな話をされたこともなく、ただ好きなようにバイオリンを弾いて、たまにブルーラグーンのバサールで弾いたりもしたが…。
「ミク、ここにいたのか」
足音もなくシャアがミクの横に来て座り込み、その後からイーズがラーンスの横に座った。
どうやら探していたようだったらしく、シャアがイーズのところに行ったのか、イーズは長衣のボタンをかけ違えている。
シャアに謝ろうとしたが、どうにもタイミングを掴みかねた。
「勝手に部屋を離れるな、ラーンス」
イーズが不満そうにラーンスの頭をわしわしと掴むと、ラーンスがその手を払いのける。
「うるっせえな。誰かさんのせいで、身体中痛ぇんだよ!」
「それは済まないな」
「済まないなって態度かよ!大体さあ…」
ラーンスがわめきたてるのをにこにこと聞いていたイーズが、ラーンスをひょいと抱き上げて小脇に抱えると白い石の廊下を歩いていってしまう。
「え、おい!」
じたばたともがくラーンスに、
「強くなりたいなら、朝稽古に付き合ってもらおう」
「はあ?やだよ。あんたの稽古に付き合うと、体力が持たない…って、聞いてる?」
「聞いてなーい」
と軽く笑いながらイーズが裏の広間に連れていき、ミクは同じように笑うシャアを見上げた。
「イーズは昔から私や末弟に気を使うことが多かったが、ラーンスが来てよい息抜きになっているようだ」
仲がいいというか、喧嘩仲間みたいで、シャアと自分とは少し違う気がする。
「ミク、視察を兼ねてバサールで朝御飯にしよう。今日は午後から月一度のオアシス長会議なのだよ」
「オアシス全部のですか…?」
「いや、ドラクーン族のオアシス長のみだ。ウォールフは別に集まりがあるだろうが」
しかし、オアシスの多くをドラクーンが支配していると聞いている。
しかもその護衛もブルーラグーンに集まると言うのだ。
「賑々しいことだが、仕方あるまい。早めに終わらせよう」
シャアが立ち上がると、ミクも従って立ち上がった。




