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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十五章 砂漠の陰謀
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砂漠の陰謀3

明けましておめでとうございます。さあ、今年も更新スタートです。

 ジョバンニは拡散してくれるはずだ。


 噂が噂を呼び、事実となり、真実を作る。


 種まきはまだ必要だ。

 

 マルクルが西の港に着きそうだった。


 右手に行けば港オアシスで、左手にはすでに砂漠が広がっている。


 船着き場はには貸し砂ロバ屋が待ちかね、奴隷を待ち構える男たちでひしめき合っていた。


「ダイナナの奴がいるね。ダイナナが奴隷を買ったあとに着いていくんだ。これをオアシスの(おさ)に」


 ビスはジョバンニに渡したが戻ってきた甘水をマンボに渡すと、マンボが細い目をさらに細める。


「分かりました」


「俺は砂ロバでヴェスパに直接向かいます。ビスさんは?」


 ビスは顎をとんとんと叩いて、爽やかに笑った。


「甘水を港オアシスで売っているよ。もちろん、ダイナナとヴェスパの男たちには安売りだよ」


 仕込みのスタートは、上々だ。


 辺境人が生きているのならば、自分達が見知らぬ内容の出来事や情報が出てくる。


 それが狙いだ。


 まあ…ダイナナとヴェスパが共倒れになるのは、楽しいショーだけど…。


 ビスは自分の悪趣味に付き合わされる二つのオアシスに、極上の笑いを見せた。




 朝の目覚めは大抵シャアの両腕が絡まり、横抱きに抱き締められている。


 本当に抱き枕だ。


 誰かが横にいないと安心して寝られないのだ。


と、シャアが苦笑いしながら話してくれた。


 少し前までは、末の弟がその役割をくれていたのだが、成人したら逃げるように出ていってしまい、浅い眠りの日々を過ごしていたのらしい。


「末の弟は私よりも背が高くて固かったが、ミクは小さくて柔らかく気持ちがいい」


 太い腕と逞しい胸板に抱き締められていて、それに慣れてしまうと、ミクはその腕の中で熟睡してしまっていた。


「…ん…」


 シャアよりも先に起きるミクは、苦労してシャアの腕から這い出ると、ベルトを外した長衣のままバイオリンだけを持つと部屋を抜け出して、早朝の冷えるパティオに出る。


「っ…くそっ…」


 陛下の親族のみが入ることが出来る中庭には、ラーンスが一人で剣を振っていて、まるで誰かを相手にしているように俊敏に剣を突きながら左手を伸ばし、


「……ちっ…」


と舌打ちをしていた。


 そんな影剣技を繰り返し、何故か左手を伸ばしてしまうラーンスの苛々とした空気が痛くてミクは、思わずバイオリンをケースから取り出すと、顎に構える。


 G線上のアリア…柔らかい低い音からの…落ち着いた曲は、流れるように…。


 ろくにメンテナンスもしていないバイオリンなのに、砂漠では本当に澄んだ今までにない音を出し、心に染み渡るように響いていた。


「……ミク…」


 ラーンスがそばかすの浮いた真っ白な顔を、ミクに向けてきて、情けないようなホッとしたような表情を見せた。 


「見てたのかよ」


「うん…」


「格好わりぃ…」


 ラーンスが早朝の中庭の段差に座り込み、ミクにも座るように手招きをする。


「リムの時の癖が抜けない…ガゼルの動きに合わせて剣を動かすと、どうしても左側から斬られるから、つい左手で光の楯を作っちまうけどさ…出ないんだ。リムじゃないもんな…俺」

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