閑話 お金がない!
改稿済
「王様、手持ちの砂金が無くなる」
ハイムが神妙な顔をして、ファナを見下ろした。
ファナはノーパソと何やら話し合っていて、通訳と言うか文字を読むためにティータとも話をしていた。
ファナもそうだが、ハイムも文字は読めない。
「あら、では、わたくしの手持ちを…」
クリムトが縫い物をしラビットが刺繍をするその作業の中で、ラビットが頭を横に振った。
「臣下の手持ちを当てにするようじゃあいかんだろう。ファナちゃん、なんか考えはあるのかな?」
ノーパソによるとこの世界での共通通貨はなく、砂金や物々交換によってやり取りをしているらしい。
砂金の流通量はさしたる問題ではないらしいのだが、砂金が取れるジュリアス王国や、ガーランド王国が二大勢力になりつつあった。
「うーん…」
「グランディア王国には耕せる土地はありませんの?」
「耕したことはないけどさあ。風穴からの毒の風があってあまり豊かじゃない…らしい」
「じゃあ、ここは生産性のない土地って訳だな。ファナちゃんや、どうしたって金はいる。どうだな」
ファナは唸りながら席を立つ。
「少し出る」
いやはや、金だ。
辺境もこちらもだ。
ファナは風穴の湖の前にいた。
「うーん…」
身体の負担を考えてファナは服を脱ぐと、全裸になって風穴の湖に飛び込む。
光の毒をたたえた水は肌をちりちりとさせたが、奥に奥に潜っていくと澄んだ水が逆に怖かった。
魚っぽい手のひらサイズの赤茶な物が泳いではいたが、何となく銃弾のような気がして、屑鉄のなれの果てが生きた鉄となりナマコのように水面を漂っては壁にへばりつく。
ファナはガンクルの為にちょいちょい来ては、このナマコのような生きた鉄をくすって食べさせていた。
ここで尻が生まれたんなら…。
底には辺境の残骸はなくさらさらした砂があり、その砂に手を入れるとざらりとした感覚と、少し巻き上がった砂の中から輝く光を見つけて、息も苦しくなり上がろうとした時、思い出して空気の丸い珠を頭に被せてた。
クリムトの技の応用だ。
空気の珠がまるで宇宙服のヘルメットのようにファナを包んでいて、手を伸ばして蔓を網目模様のようにして、ファナは砂を掬う。
網目に光る輝きを確認して、泳ぎ上がっていった。
「ハイム、ラビット、これでいいかー?」
ファナが持ってきた金粒にハイムは飛び上がらんばかりに驚き、ラビットも
「砂金以上だな…これは、どうしたんだな」
と興奮している。
「あー、まあ、風穴の湖で掬って来た」
携帯電話の一部には金を使用している。
だから、生きた鉄生物になった尻から脱落した部品が、何からの形で残っていると思ったのだ。
「すっげえ~」
砂金以上の金の価値は正直、わからない。
しばらくはこれでいいか…と、ファナは思うのだった。




