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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十四章 それぞれの戦い
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それぞれの戦い7

「陸っくん、あれ、モスだよ~」


 隣に海がやって来て、重い乳をゆさりと縁につけ、その背後から空が海の背後にぺたりとくっついた。


 モスは白い巨大な芋虫だったはずだが、繭になり…。


 明らかに小学生時代に見た、野外トイレの電灯の番人白いバージョンのはらわたが目前に消え、キラキラとした鱗粉を撒き散らしながら、北へと消えた。


「海さん、日下じいじの預言」


「うん、そうだね、空ち。陸っくん、追わないと!」


 三人は山本と加藤に頭をペコリと下げ、陸がややうつむき加減に、


「私たちのこと、佐藤さんと木村さんには話さないで下さい。嫌な思いをされると思います」


と話し、それから


「今から、モスを追います。北から東の海を抜けて、西に向かうモスの執着地点に向かうことが、日下博士に託された最後の任務ですから。ですから…あの…出ますから、横を向いていていただけると…」


と真っ赤になる。


「お、おお、そうだな。失敬、失敬」


 山本と加藤はくるりと横を向き、頭のタオエルをペロリと眼前に掛けた。


「行きましょう、海さん…え?」


 海がざぶざふと背後に近寄り、並んで横向く山本と加藤の背中を抱き締める。


「今度はお背中を流しますね~」


 それから空が二人の頭を撫でて、


「役得だね。じいじたち、お達者で」


と浴槽から出てきた。 


「もう、二人とも!」


「大丈夫、陸っくんの分まで抱き締めたから~。さあ、行くよ~」


「の、前にパンツはいて…パンツがありません!」


 陸の絶叫に、


「わ~お、ノーパンデルタフォース、出動」


と空が呟いた。




「馬子にも衣装…と言う感じだな」


「隊長、誉めてない」


「空、これは誉め言葉です。隊長、変ではありませんか?」


 変わりにジュリアス王国銀の聖騎士シャルルが、肩までの巻き毛をかきあげて微笑む。


「よく似合っている。義母の手作りを貰ってくれて助かる」


 どうやらシャルルの服らしいのだが、ドレープもフリルもふんだんに使ったパンツスタイルに、辟易していたのか、服について控えていた使用人に話すと、シャルルが山のように持ってきたのだ。


 胸のラインや上背はすぐさま侍女が直すあたりが素晴らしいし、なにより虫の布を様々な色に染め抜いた美しさと柔らかさにうっとりとしてしまう。


「お前たちは本当に美しく華やかだ。衣装はふんだんに使え。西では必要になる砂金も用意した」


 透き通るような美しさのシャルルに言われてしまうと、デルタフォースも嬉しくないわけもないが、服だの砂金だの惜しみ無い支援に戸惑ってしまい、陸がシャルルに膝をついた。


「気にするな、虫の移動は何かあると俺たちも知っている。虫が飛翔した先に向かえと父にも言い伝えられたが…。俺たちはここを離れられないのだから、お前たちに託すしかないのだからな」


 仲間のために自由に動き諜報活動をする、それがこの世界でのデルタフォースの仕事だ。


「北の外れから東に抜けるルートがある。そこから海岸を目指せ。海からではないと西には渡れない」


「は!」


 陸は深々と頭を下げ、礼を取った。

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