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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第十四章 それぞれの戦い
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それぞれの戦い4

改稿済

 クリムトはノーパソの画面に羅列した楔型文字を一瞬で読み通し、背後から声を掛けた。


「マスター、左へ軸足、左下から斜めに振り上げ!」


 ハイムが迷うことなく、ファナと向かい合ったままクリムトの指示に従う。


 腕を振り上げた瞬間、


「マスター、膝を曲げて首もとへ!」


ひゅっ…と音を立ててファナの首根っこへクニミツが向かってきた。


「わわっ」


「伸びろ、クニミツ」


 クニミツの反り刃がくんっ…と伸び、ファナの頭のてっぺんの髪を何本が削ぎ止まる。


「マスター、王様の足元!」


 ファナは完全に転がった状態で、しかしハイムの足払いをしつつ、くる…と小さく回転するとそのままハイムの懐に突っ込もうとした。


光珠(オーブ)、お行きなさい」


 クリムトが唇に二本の手を押し当て、優雅に投げキッスのような仕草をすると、シャボン玉のような小さな光珠がきらきらとそこかしこに散らばる。


 リムポンチョの裾に光の珠がぶつかった。


「遅いですわ、王様!マスター」


 小さな珠が炸裂し光を放ち、ファナはその光に


「閃光弾…目潰しとはな」


と呟き、瞬時やって来る反り刃の風圧を感じて、反対側にばく転をする。


「くそっ…王様、速すぎる!」


「マスター、そのまま横にエッジを切って!刃に光珠を集めます!」


 指先でシャボン光を集めるクリムトの優雅な指先に、


「させるかよ。光の板!眼前可視化!」


ファナは叫んで土まみれの身体を起こし、ハイムに向かって走り出した。


 タタタン…と、ファナが空を飛んだ。


 仕込みの玉ねぎを剥いていたラビットが、明らかに空中にいるファナを見て、手の中の玉ねぎを転がした。


「飛んで…飛んで…飛んで…飛んで…」


 空中に何かあるか、タン、タン…と空中三角飛びをしたと思ったら、斜め真上からハイムに目掛けて回転しながらトンファを突き出す。


「回って…回って…回って…回る!?」


「くっ…そ!」


 ハイムがすくい上げるように下からクニミツを突き上げた。


「甘いな」


 回転により威力を増したトンファを突き立てると思いきや、そのままハイムのクニミツを叩き落とし、反動で落ちながら背後に回り込んで首を締めたのだ。


「ぐっ…うっ…」


「はい、ハイムの負け」


 腕で気道を押さえ潰しその手首に手を添えていたものを外すと、ハイムが脱力してがくりと膝をつく。


「マスター!」


 駆け寄ろうとするクリムトをファナが制して、ハイムに手を伸ばすと、


「そんなにヤワじゃないだろ?」


とにやりと笑う。


「…本気で喉締めたな…」


 土まみれはお互い様だが、意外にも苦戦したファナは憮然としていた。


「お前だってマジだっただろーが。クニミツ、やる気満々だったしさあ。ま、クリムトが指示を出す、それはいいやり方だ」


 それからちらりとティータを見ると、


「ファナ様が負けるとこ、見たかったのよ。そしてなぐさめてあげるの」


と、ティータが顔をノーパソで隠す。


「おいおい、ファナちゃん、今のはなんなんだな。空中を蹴って…」


 慌てたのはラビットで、ラビットは包丁を持ったまま歩いてきた。

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